内容説明
新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した尚吾と紘。二人は大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。受賞歴、再生回数、完成度、受け手の反応──プロとアマチュアの境界線なき今、世界を測る物差しを探る傑作長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みこ
75
学生時代に映画賞を受賞するも卒業後は対照的な道を歩む二人。しかし、一見異なる道を歩いているかのような二人は実は同じ道をそれぞれ葛藤を抱えながら歩いていた。周りの求めるものか自分の求めるものか。YouTubeや配信など非常に現代的なアイテムを使いながらも普遍的なテーマを語るまさに朝井リョウといった感じ。初心者には刺激が強いかもしれないが愛読者には求めていた心地よさを感じさせる。2023/06/06
ゆいきち
55
学生時代、同じ方向を向いて一緒に映画を作った2人。卒業後、一方は映画監督の元に弟子入りし王道の道へ、一方は職には就かずにフラフラして持ち前の感性を活かしてYouTube動画製作をするようになる。映画監督とYouTuber、果たしてどちらが「スター」なのか?また、何をもって誰が作品を評価するのか?大事なのは作品の質なのか、それとも「バズる」ことなのか?うーん、新しい!どちらの視点もよく取材されていて読みごたえのある一冊でした。2023/05/18
カブ
52
伝えたいことは分かる気もするが、心のモヤモヤが残る本作。表現することを突き詰めていくとわからなくなってしまうのか。受け手としての自分の心持ちも変わっていくのか。今は世の中の変化のスピードに追いつけない。2023/04/08
seba
41
自分の譲れない評価軸も、源泉を辿れば物心つかない頃に誰かに影響されて得たものだったりする。そこから様々な経験をして自分の中で育てられたものが自分の感性であり、大事にしたいと思う。しかし価値観の多様さがより顕在化した現代においては、自分のものとは全く異なる評価軸の存在を認識する場面が嫌というほどある。自他のそれは比べるものではないのに、無意識に比較してしまい不愉快になったりさえする。そんな中で自分の評価軸を時に疑い、止揚したりあるいは単純に再考してみることもまた、自分の感性を大事に磨くことの一環だと思えた。2023/07/07
葵@晴読雨読
35
ある映画賞で大学時代にグランプリを取ったクリエイター2人の卒業後のお話。一人は名監督の元に弟子入りし、一人はYouTuberへ。主軸は映像を扱っているけれど、映像関係やクリエイター関係でなくどんな仕事にもあてはまるような気がした。再読したい本。2023/04/16