ちくま新書<br> 東北史講義【近世・近現代篇】

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ちくま新書
東北史講義【近世・近現代篇】

  • ISBN:9784480075222

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内容説明

「東北」とは、幕末から近代において作られた言葉である。古代以来の律令制国たる陸奥・出羽二国の領域を「東北」と呼称して、地方の一体性を強調する現象が発生していくのは、主に近代以降のこと。時としてそこには「後進」や「周辺」の意味が込められている場合がある。本書は、この問題関心のもと、近世・近現代の東北史を三つの視点から描写する。一点目は、中央との位置。二点目は、各地との交流。三点目は、中央の影響力のもとでの地域の独自性である。

目次

はじめに/第1講 近世の幕開けと諸藩の成立……兼平賢治/奥羽仕置への抵抗/九戸一揆と奥羽再仕置/朝鮮出兵と「日本のつき合い」/関ヶ原合戦前/関ヶ原合戦と奥羽/江戸開府と奥羽大名/一国一城令/奥羽の馬と鷹/家中騒動と「奥羽の押」/元和飢饉と寛永飢饉/証人制度と奥羽諸藩/直仕置から家老政治へ/殉死の流行/殉死禁止令と剃髪/一七世紀のパラダイムシフト/第2講 藩政の展開と藩主……清水 翔太郎/奥羽諸藩の一八世紀/一八世紀初頭にかけての秋田藩政/享保の改革/銀札仕法事件と藩政の混迷/八代藩主佐竹義敦の時代/佐竹義和と寛政の改革/第3講 社会の変容と諸藩……天野真志/混迷する社会──「内憂外患」との対峙/藩政改革と学問受容/藩校教育と人材登用/遊学と交流/知の広がり/政治関心から政治関与へ/政治動乱への眼差し/第4講 幕末の諸藩と戊辰戦争……栗原 伸一郎/幕末期の奥羽諸藩/幕末政局と奥羽諸藩/諸藩連携と奥羽連合構想/奥羽列藩同盟の成立と活動/列藩同盟と非「奥羽」諸藩/敗戦と「東北」/第5講 明治政府と東北開発……小幡圭祐/〝大久保利通による東北開発〟像/東北開発の嚆矢/大久保利通の意図/東北開発の諸相/大久保利通像の現在/第6講 近代日本の戦争と東北の軍都……中野 良/近代日本の軍隊と軍都/東北における軍都の形成/軍都の拡大/軍都の構造/軍隊誘致運動と存置運動/東北の軍隊の派兵/昭和の戦争と東北の軍隊/戦後の軍都/第7講 戦時体制と東北振興……伊藤大介/東北振興の起こり/東北振興調査会の設置/東北振興第一期総合計画/東北振興の国策会社/国土計画と東北振興/東北振興の終結/戦後の東北振興/第8講 戦前戦後の東北の流通経済──百貨店を中心に……加藤 諭/近代小売業からみる東北の流通経済/連合共進会の動向/東北名産品陳列会、東北産業博覧会と百貨店/中央百貨店の地方進出/戦前における東北の百貨店展開/戦後における東北の百貨店と流通政策/第9講 〔特論〕奥羽の幕領と海運……井上拓巳/統一政権の直轄領と奥羽/陸奥国の幕領/出羽国の幕領/奥羽諸藩の廻米/奥羽城米輸送の開始/河村瑞賢による東廻り航路の城米輸送/瑞賢による西廻り航路の城米輸送/瑞賢による城米輸送の意義/城米輸送の展開/津軽海峡を越える城米輸送/奥羽海運と全国的な海運ネットワーク/第10講 〔特論〕神に祀られた藩主──弘前藩四代藩主 津軽信政……澁谷悠子/信政の生い立ちと人となり/藩主就任と支配機構の整備/シャクシャインの戦いへの派兵/元禄の飢饉での失政/死後の神格化/神に祀られたもう一人の藩主──保科正之/信政治世の特質/第11講 〔特論〕近世後期の災害と復興・防災……高橋陽一/旅が広めた災害情報/家数と米価/豊穣な土地/奥羽開発論へ/復興と温泉/復興・防災社会/災害と観光/第12講 〔特論〕東北開発と地域有力者……徳竹 剛/安積開拓と大槻原開墾/維新期の阿部茂兵衛/大槻原開墾の入植者募集/阿部茂兵衛の意図/開成社の結社/開成社、暗転/安積開拓・疏水事業の人脈/人脈という政治的資源/第13講 〔特論〕近代東北の教育と思想家……手嶋泰伸/旧制中学と新制高校の連続と非連続/東北各県における旧制中学の設立/珍しかった中学校への進学/豪華な教師陣/頻発したストライキ/第14講 〔特論〕東日本大震災と歴史学──史料レスキューの現場から考える……佐藤大介/東日本大震災の経験と歴史学/日本の地域に残る史料(古文書)の危機/自然災害と「史料レスキュー」/宮城での史料レスキュー──災害「後」の救済から災害「前」の保全へ/「もっとも悲しい実証」──東日本大震災で消えた古文書/被災地での史料レスキューの展開/史料レスキューがもたらしたもの──市民ボランティアの動向と意識/歴史を再生する取り組み──地域誌と「大字誌」/被災地との関係が問い直す歴史学・研究者の役割/史料レスキューの可能性──人を結びつけ、人を支援する/地域の歴史に関心を持つ方々へ──宮城被災地からのメッセージ/第15講 〔特論〕東日本大震災と地域社会──福島県双葉郡富岡町の原発立地から全町避難を考える……門馬 健/複合災害と富岡町/大規模災害からの地域性保存/富岡町の誕生と以後の産業構造/『富岡町史』に見る原子力発電所と諸問題/地域資料保全活動から見える富岡町/震災後の町民の受け止め/「地域」でこれからを生きるために/さらに詳しく知るためのブックガイド/編・執筆者一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

てん06

12
戦国時代末期から、現代特に東日本大震災の後まで、いろいろなテーマで研究者が論じる。戊辰戦争、軍都としての東北、百貨店を中心とした流通経済、近代東北の教育、自然災害の発生前後の史料レスキューに関する論考が面白かった。史料レスキューに関しては東北だけでなく、自然災害の多い日本全体での課題だと思う。地域の人たちが考える「(城下町などにみられる)立派な歴史」ではなく地元に残るその土地の成り立ちや歴史といったある意味「地味」な史料を探し保存する営みが重要ということを再認識した。2025/07/21

qwer0987

8
古代・中世篇同様、雑多な印象はあったが、どの議論も読みごたえがあった。個人的に面白かったのは、藩主に傷がつくことを恐れ改革を進められない秋田藩政の状況や、藩校教育の充実と遊学から他藩との結びつきができる様、衰退する城下町がその挽回をねらって軍を誘致する構図、三越などに対抗して地元の百貨店ができる過程、飢饉の発生を受けて温泉で復興を目指す領民と農業振興での復興を目指す藩の指向性の違い、震災における史料レスキューの現状や、原発の存在と地域における歴史教育や史料保存がなされていない状況への警告など興味深く読んだ2023/06/10

アメヲトコ

8
2023年3月刊。近世以降の東北史のさまざまなトピックを15講に分けて論じた一冊です。明治期の大久保利通による東北開発像の見直し(小幡論文)、満洲に対する東北の人々の加害的側面の指摘(伊藤論文)、近世における災害復興と観光の関係(高橋論文)、震災後の歴史学の営為(佐藤論文)など、興味深く読みました。2023/03/21

fseigojp

7
津軽藩の開祖がアイヌと戦っていたとはしらなかった2024/01/29

つわぶき

7
17世紀以降の東北史を藩政期の政治・学問・流通や戊辰戦争、近代における国策と地域の関係、東日本大震災に伴う郷土史料の保全等の様々な各論を取り扱った本。先ず、「東北地方」という枠組みが戊辰戦争を通じて形成されたもので、その一体性は割と近代的で、しかも「日本」という国家意識の形成よりも後であった(国学の隆盛によるナショナリズムの勃興を国家意識の形成と捉えればであるが。)のは、意外であった。また、中央との関係性で言えば、陸軍部隊と地域社会の関り合い、更に東北の郷土部隊が満州における(続く)2023/09/17

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