内容説明
渾身の二大パニック・ホラー巨篇、待望の復刊。
「凶鳥〈フッケバイン〉」
一九四五年、敗色濃厚なドイツ第三帝国。総統の元に、謎の飛行物体が墜落したとの報が。それこそヒトラーが恐れ、求めた〝宇宙機〟凶鳥〈フッケバイン〉であった。だが、回収を命じられたドイツ陸軍降下猟兵部隊の前に、異形の群れが立ちはだかる!
「黙示の島」
日本政府は高齢化問題を一挙に打開すべくロングライフ計画に着手。洋上の孤島・鼎島の島民に対し医療措置として皮膚下にバイオチップを埋め込む実験を開始する。しかし、大型台風が島を襲った後、島民がフナムシに食い殺される事件が発生した。ありえない状況の死体に底知れぬ不安を抱く島民たちだったが、やがて自らが異常な活力と暴力性を発揮し始め……。
さらに、歴史シミュレーション短篇「如水上洛」、自衛隊ルポ「二隻の護衛艦」、大藪春彦追悼エッセイ「伊達邦彦は一人きり」を増補し、小泉悠氏による特別寄稿「我が佐藤大輔史」を収録。
【収録一覧】
『凶鳥〈フッケバイン〉』
『黙示の島』
短篇「如水上洛」
ルポ「二隻の護衛艦」
エッセイ「伊達邦彦は一人きり」
特別寄稿「我が佐藤大輔史」小泉悠
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メロン
6
佐藤大輔は好きな作家の一人で死去後出版された愛蔵版シリーズを大人買い本書をまず読んだ。収録作品は二つとも読んだことがなく、久しぶりに佐藤大輔ワールドを新鮮に読むことが出来た。どちらもSFテイスト 凶鳥はww2、エイリアン、ゾンビものと言うべきだろうか。てんこ盛りの設定だが佐藤大輔特有のガッチリとした緻密な描写でするする読めた。 黙示の島はハイスクールオブザデッドの設定に近い作品。バイオハザードゾンビもの。どちらも佐藤大輔作品にしては『珍しく』完結した作品でありきれいに終わる。佐藤御大死ぬの早すぎるよ...2023/07/02
こぼこぼ
1
中公の愛蔵版シリーズは若干落ち穂拾い的な内容。中編2本はどちらもパニックスリラー的色彩が強いが,発表から20年以上を経た現在でも古さを感じさせない(例:「黙示の島」の超高齢化社会)。佐藤大輔は「絶望するな。卑怯者であるな。義務を果たせ」を信条とする人を描き続け,本書収録作品の登場人物にもそれが現れている。この高潔なキャラクタ造形が現在も読者を惹き付けている一因なのかな,と思う。つくづく惜しい作家を失ってしまった。嗚呼。2023/07/31