内容説明
すべての物理法則が破綻する「特異点」は、ふつうの宇宙であれば必ず発生する。物理学者にとってショッキングな
この事実を証明したのが、ロジャー・ペンローズの「特異点定理」だった。
しかし彼は、一方ではこんな「仮説」も提唱したーー本当に厄介な「裸の特異点」は、宇宙検閲官がブラックホール
で覆い隠してくれている、だからきっと大丈夫だ!
はたしてこの仮説は、定理となりうるのか、それとも願望にすぎないのか? 物理学の存亡をかけた検証が始まった!
2020年ノーベル物理学賞の対象となった「特異点定理」を一般書で初めて解説し、一般相対性理論はみずから破綻する「宿命」であることを示しながら、宇宙検閲官仮説が本当に成立するか否かをスリリングに検証! そこからは、宇宙創成の謎解きにつながる数々の最先端の理論も「副産物」として生まれてくる! 映画『インターステラー』に描かれたブラックホールと特異点のリアルな姿がここにあります。
(本書の内容)
第1章 一般相対性理論とは
第2章 アインシュタイン方程式の解
第3章 特異点定理
第4章 宇宙検閲官仮説
第5章 特異点定理と宇宙検閲官仮説の副産物
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
226
成る程、分からん。相対性理論は宇宙を記述するのにとても良い道具となっています。以前「光より速い粒子を発見した(かも)」ってニュースに「それを認めちゃうと相対論を大幅に修正するか、捨てないといけない(そうなると、色々崩壊しちゃうね)」って事があって。実際には取り下げられたけど、理論と観測が密接に関わっている事例かなと思うの。特異点は相対論を崩壊させるので都合が悪い。それを巧く説明出来るかもって仮説ですね。それを論理的に導き出しているのが重要。将来期待される量子力学との融合で、どう解釈されるか愉しみにします。2023/03/24
春ドーナツ
10
一般相対性理論には特異点の存在が含まれている。特異点とは分母が0になってしまう状況だ。X÷0=無限大。物理学とは自然現象を数値化する学問だから、これは困る。袋小路。ブラックホールの内部に特異点があった場合は「なかった」ことにして計算を進められるけれど、宇宙空間に普通に特異点があると大問題だ(例えばビックバンの前に特異点という場が先行した場合)。純粋数学の定理で特異点は「ある」ことが判明したけれど、自然の摂理はそれを許さないだろう。量子論に重力の法則を組み合わせたポスト相対論が確立されれば解決されるかも。2023/03/03
すばる
4
あらゆる物理法則が破綻してしまう「特異点」は、物理的にあってはならない点であるが、ペンローズの「特異点定理」によってブラックホール内部では自然出現することが証明された。これをめぐる研究者の取り組みと、「特異点」についての一般度読者向けの解説書であるが、内容は極めて難しく、理解したとはとても言えないが、雰囲気はつかめた。一般相対性理論の「解」がさまざまあるという点も興味深い。超ひも理論やプレーンワールドにも触れており、はるかに高い次元に我々の世界が属しているのではという話は不思議な気持ちにさせられる。2024/01/18
akiakki
4
数式が多めでこれまで読んだブラックホールに関する本より2段は専門性が増した本です。例えばカー解やシュワルツシルト解の詳細やフリードマン解、富松‐佐藤の解なども載っています。肝心の宇宙検閲官仮説と特異点定理は説明が端折りすぎで結論結論&結論という記載なのが残念。2023/07/19
Akiro OUED
3
裸の特異点、どんな姿をしているのか。宇宙検閲官は黒塗りする。宇宙論研究の最前線に日本人研究者が複数登場するのがうれしい。蒸発するブラックホールに落ち込んだ情報はどうなるのか?未解決問題だ。印象的な数式が適度に散りばめられている、ブルーバックスらしい一冊。5年後の第2版に期待。2023/05/31