内容説明
大正末期、貧しい農家に生まれた少女・絵子は、農作業の合間に本を読むのが生きがいだったが、女学校に進むことは到底叶わず、家を追い出されて女工として働いていた。ある日、市内に初めて開業した百貨店「えびす屋」に足を踏み入れ、ひょんなことから支配人と出会う。えびす屋では付属の劇場のため「少女歌劇団」の団員を募集していて、絵子は「お話係」として雇ってもらうことになった。ひときわ輝くキヨという娘役と仲良くなるが、実は、彼女は男の子であることを隠していて――。福井市にかつて実在した百貨店の「少女歌劇部」に着想を得て、一途に生きる少女の自我の目覚めと、戦争に傾く時代を描く長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
エドワード
29
昭和初期、福井。貧農の家に生まれた絵子は本を読むことが好きだった。男尊女卑の考えに逆らう絵子は家を追い出され、人絹工場で働き、吉田朝子と出会う。青鞜、イプセン。朝子は絵子に新時代の思想をもたらす。次に絵子は福井初の百貨店・えびす屋の支配人・鍋川と出会う。鍋川は、彼の夢の国に少女歌劇を創設し、絵子が劇を書く。新しいものが生まれながら、戦争への足音と統制が共存する昭和初期の世相が巧みに描かれる。最後に絵子が出会う、美少年の清次郎こと少女歌劇のスター・キヨの正体は?戦後の焼け跡から立ち上がる絵子に期待だ。2023/03/22
陽ちゃん
11
大正時代の福井の農村に生まれた絵子は、本の好きな少女でしたが、子どもであっても大事な人手として扱われる農家にあって女の子だからと弟と差別されることに疑問を抱き、それを父母にぶつけたことから彼女の人生は思わぬ方向へ向かうことに。女工、百貨店のレストランのウエイトレス兼歌劇団の脚本家と色々経験するものの、戦争で職場を失い生家に戻った絵子が、戦後どう生きていくのかが気になります。2023/03/22
Ayako H
8
図書館から。内容をよく把握せずに予約していた本。表紙のふんわりしたロマンチックな絵に反して内容は骨太でした。第一次大戦と第二次世界大戦の合間のちょっと不幸でちょっと幸せな期間の話。歴史のおさらいもあって面白かった。2023/07/02
くらげ
7
タイトルに惹かれて買ってみた本。その由来を知り、昔の言葉遊びはとても面白いなと思いました!女性というだけで、本を読むことを抑圧されていた時代があること。その場面では息苦しさを感じ、こうして読書を楽しむことができるのも、当たり前の事ではないと改めて思いました。最後はとてもとても切なく、寂しく、やりきれない気持ちになりました。この時代の百貨店、想像するだけでもレトロ好きにはたまらないです!2023/03/14
火星人碧
4
舞台となった土地には住んだことがある。時代は違うが大体の地理が分かる。絵子のたどる人生が万華鏡のように目まぐるしい。福井という地方都市を舞台したのは作者が土地の出身者だからか。私も絵子のように繊維を生産する場所で働いていた。職場は昔女工がいた場所ときいた。昭和初期の風景や風習が、平易な文章で描かれ、読者をその時代にいざなう。朝子という魅力的な女性が出てくるが、「戦争が終わるまで生き延びて逃げ切りましょう」と絵子に言葉を残して去る。続編があってもおかしくないが、その去り方も朝子らしく恰好いいと思うのだ。2023/02/22
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