内容説明
君はすっかり読んでしまったら、この本を捨ててくれ給え。そして外へ出給え――。語り手は、青年ナタナエルに語りかける。「善か悪か懸念せずに愛すること」「賢者とはよろずのことに驚嘆する人を言う」「未来のうちに過去を再現しようと努めてはならぬ」。二十代のジッドが綴った本書は、欲望を肯定し情熱的に生きることを賛美する言葉の宝庫である。若者らの魂を揺さぶり続ける青春の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アムリタ
15
40年近く再版されていなかったジッドの「地の糧」が新潮文庫からヨルシカとのコラボレーション限定カバーと共によみがえり異例の売上げとのこと。 それはそれとして、全編を貫く散文詩は、 「頭の学問を止めよ」 「平和な日を送るよりは、悲痛な日を送ることだ」 「周囲を捨てよ、君の家庭、君の書斎、君の過去ほど危険なものはない」 と続く。 欲望と快楽、本能の讃美の書。 そこを突き抜けた先にジッドが求めたのは意外にも、本来無一物という禅の境地に限りなく近いもののように感じられた。 読み終えてまだ眩暈に似た感覚のまま。 2023/07/07
孤島天音
12
ところどころに出てくる果実や音、情景の描写がインスピレーションや郷愁、希望、、、(うまく言葉にできない感覚)を引き出してくれる。そしてこの感覚はこの本に書いてあるように「この本を捨てて」外に出ないと真に味わえないかもしれない。実際に本を捨てる勇気はないけど、もっと外に出て、自然界の色々なものを通して得られる感覚を求めてみるのもいいかもしれない。2023/07/30
ハルト
11
読了:◎ 何度もくり返し読みたくなる書。詩的な言葉がするすると、流れこむように身体に浸透してくる。青春の書であり、欲望の書でもある。すべてに共感するということはないけれど、それでも、冬を越し春を迎えた植物たちが地の糧を養分として吸いとり、新たに目覚め、芽生え、成長していく姿は、若々しい青春を背負った一人の青年のことを思わせる。青年の経験に書は大いなる影響を残すからこそ、一読すればよく、あとは体感として青春を、欲望を浴びればよい。書物というのは欲望の疑似体験なのかもしれない。2023/05/31
さり
8
内容的に学びがあっておもしろい 文体が本を読んだ人だったんだろうなって感じる。個人的に、、あまりすきじゃない2023/07/28
タヌキネコ
5
ヨルシカコラボのカバーが印象的だったのと、裏表紙に「寺山修司が『書を捨てよ、町へ出よう』と引用したことで知られている詩集、思想書。」と、書かれていた言葉がなんだか印象的で衝動買い。 全ての命やこの世界の美しさ、素晴らしさをただ肯定するような本に私には感じられた。 もうとっくに中年だけど、この本一冊だけ持って、自然の中でのんびりするような旅がしたくなった。いや、書は捨てなきゃいけないのか?2023/06/18