内容説明
〈大きな悲しみが、私を守ってくれる〉
『ショウコの微笑』<a href= https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=949 >『わたしに無害なひと』</a>の気鋭のベストセラー作家、初の長編小説
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夫の不倫で結婚生活に終止符を打ち、ソウルでの暮らしを清算した私は、九歳の夏休みに祖母と楽しい日々を過ごした思い出の地ヒリョンに向かう。
絶縁状態にあった祖母と二十二年ぶりに思いがけなく再会を果たすと、それまで知ることのなかった家族の歴史が明らかになる……。
家父長制に翻弄されながらも植民地支配や戦争という動乱の時代を生き抜いた曾祖母や祖母、そして母、私へとつながる、温かく強靱な女性たちの百年の物語。
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日が昇る前に大切なあの人に伝えておきたいことがあった。
明るくなったら、言えなくなりそうだから……。
2021年〈書店員が選ぶ“今年の小説”〉、第29回大山文学賞受賞。
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【目次】
■明るい夜
■あとがき
■日本の読者の皆さんへ
■訳者あとがき
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「ものがたりを読む」ことの楽しさや喜びをお届けする新シリーズ〈ものがたりはやさし〉第1弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
32
よしながふみの『愛すべき娘たち』で、美貌を鼻にかける学友を見てきた母親が、自分の娘はああいう性格にさせまいと、わざと容貌をけなして言い続けたという話が出てくる。しかし娘は戒めと取らず、娘には「可愛い」と言い続けて育てる。成長するにつれ、親の欠点を見抜いた子供が、いざ親となった時に自分だけはそうなるまいとする。うまくいけば順繰りにいい母娘関係が築けていくはずなのに、そうはならない。本編でも、母のバックグラウンドを知らない娘が母の育て方に反発し、家というより母から逃れたくて結婚を選ぶ。2023/02/28
ケイティ
27
引き込まれて一気読み。とてもよかった。離婚して地方へ移住したジヨンは、絶縁状態だった祖母と再会し、曾祖母から現在まで、母娘4世代の歴史が紐解かれていく。日本統治や戦時下で緊張を強いられた日々、差別、家父長制など、つらく不自由な生活を支えあう友情に胸を打たれた。どの世代もそれぞれの生きづらさは抱えている。「自分が我慢していればいい」と期待や希望を持たないことで生き延びてきた彼女、そして私たち。祖母とジヨンが語り合う時間、空気感が切なくもあたたかく、崩壊と再生を繰り返す壮大ながらも等身大のドラマでした。2023/03/29
かもめ通信
25
根強い身分差別、家父長制、植民地支配、朝鮮戦争といった朝鮮近代史を背景にした4世代にわたる家族の物語だ。愛と友情の物語でもある。疲れ果て傷ついた女たちの傷を癒やす物語でもあり、母娘の再生の物語でもある。以前、『わたしに無害なひと』を読んだ時にも感じたことだが、チェ・ウニョンさんの作品にはあちこちに心に残るセンテンスがあって、そうした言葉に出くわすたびに、思わず書き写しておきたくなるのだけれど、今回は先行きが気になって、途中で頁をめくる手を止めることができず一気に読んだ。2023/03/03
kumako
12
あらすじに「曾祖母から私へとつながる、女性たちの百年の物語」とある。曾祖母から百年経っても、女性蔑視が無くなっていない。ましてや、母が娘に対してその行動をとっている。母の思う幸せと娘の思う幸せとの相違、別々の人間なんだから考えが異なるのは仕方のない事、物理的に離れるしかないよね。祖母と私が柚子茶を飲みながら語り合うシーンは映像にしたら可愛らしい画になりそうで、見てみたいです。2023/08/24
ori
12
ずっと読みたいと思ってた待望の長編。チェ・ウニョン、やっぱり好きだなあ。そして初の長編で韓国近代史を背景に女4世代のシスターフッド大河ドラマを読めるとは。社会や歴史の流れや家父長制のため常に自由がなく自分の意思を持つことすらできなかった女性が世代を超えていくにつれ徐々に少しずつ自由を獲得していく。牛歩な進度でも。理不尽な思いをし続けてきた祖母が開放的で新しい感覚を持ち、母親の方が旧来の家父長制的価値から抜け出せないのも案外あることかな。世代にステレオタイプがいるわけでもない描き方が逆にリアルでうまい。 2023/06/02