内容説明
細胞内の濃厚な環境で絶えず作られている「液滴」。ここにこそ生命を駆動する法則がある。相分離生物学が展望する新たな生命像とは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
59
10日掛けてゆっくりじっくり。好著快著。いすず書房フェアで発掘した一冊。生物学はここまで来てる!2024/02/02
クリママ
40
分子ではなく、分子と分子の間に生命の鍵がある。分子と分子の相互作用を主役にし、分子集合物を生命の理解の単位にする生命科学を相分離生命学という。金属以外の物質は分子で出来ているのに、生きた状態と何が違うのか。アミノ酸、タンパク質、RNA、溶解度… ご子息のアレルギー、認知症の薬、狂牛病、なじみのある言葉から始まり、丁寧に説明されているのに、用語さえ難しく、とても理解できたとは言えない。でも、読みたいと思う。35億年前に発生し進化し続ける生命の不思議とすばらしさを知り、その研究の過程を見ることは胸躍ることだ。2024/04/11
kamekichi29
7
相分離生物学というのは比較的新しい分野の学問らしい。この相分離生物学の立場から生命とは何かについて考えます。タンパク質単体で考えるのではなく、タンパク質が溶けている環境、濃い有機スープの濃度も関係しているらしい。難しいところもあったけど、面白かった。2024/04/20
人生ゴルディアス
4
面白かった。細胞をすり潰すと失われるのはなにか? フラスコに部品を過不足なく入れれば再び生命として動き出すのか、という話。部品を並べただけでは動かず、部品と部品の関係性が必要であり、それは液-液相分離だそうだ。物質Aがあると物質Bが集まりやすく、水と油が分離するみたいに細胞内で濃度差が生まれ、この物理的関係性が様々な反応のトリガーとして機能する。細胞がすり潰されて失われるのは、この濃度差などなのだろう、という結論。要はタンパク質レベルでエントロピーを効果的に減少させる方法があるのだと理解した。2023/10/17
Teo
2
相分離生物学と言うのを知らなかったので買った。なるほど、確かにここで言う路線図に該当する代謝経路は私が学生だった時代にはもう明らかになっていて、そう言うものだとは思っていた。だが、それはあくまでもそう言う路線図みたいなものであってそれが生物の細胞内で構成要素を放り込んだら動くものではない。液‒液相分離によるドロプレットの構成によってそこに高濃度の関係酵素などが集まる事で駆動される。私が生物学専攻から離れてからそんな理論が組み立てられていたんだ。2023/05/23