内容説明
現在、英文学の代名詞として語られるシェイクスピア。元々は舞台の台本として書かれたその作品は、後世の創作家たちによっていかにして新たな息吹を吹き込まれ、世界に知られるようになったのか? 『高慢と偏見』『大いなる遺産』などの英語圏文学、ラム姉弟による児童文学『シェイクスピア物語』、ローレンス・オリヴィエ、黒澤明による映画など、時代と地域を超え、姿形を変えた作品の数々を分析し、名作の知られざる魅力に迫る。
目次
はじめに/序章 小説の中のシェイクスピア──『高慢と偏見』『大いなる遺産』『赤毛のアン』ほか 廣野由美子/1 小説に現れたシェイクスピア/近代小説の誕生/ゴシック小説『オトラント城』/喜劇的恋愛小説『高慢と偏見』/ヴィクトリア朝小説(1)『大いなる遺産』/ヴィクトリア朝小説(2)『サイラス・マーナー』/2 シェイクスピア、二〇世紀の小説世界へ/「意識の流れ」の小説『ユリシーズ』/ディストピア小説『すばらしい新世界』/探偵小説『ポアロのクリスマス』/少女小説『赤毛のアン』/日本の小説『虞美人草』/シェイクスピアとの出会い/第1章 劇場の中のシェイクスピア──『ロミオとジュリエット』 山智成/1 シェイクスピアの台詞と劇場/上演台本としてのシェイクスピア/劇場形態と祝祭性/韻文の音楽的魅力/情報量の豊かさ/2 シェイクスピアの台詞とライブ上演の感覚/韻文の台詞と役者の存在感/ロミオとジュリエットの初めてのやり取り/劇自体の虚構性を認める台詞/3 シェイクスピア作品の重層性/台本から逃れられない二人の恋人/同じ人物、事象をさまざまに映し出すシェイクスピア/第2章 子供の世界のシェイクスピア──ラム姉弟の『シェイクスピア物語』 廣野由美子/1 ラム姉弟の人生と文学活動/『シェイクスピア物語』の背景/ラム姉弟の生い立ち/メアリによる母親刺殺事件/児童文学の世界への参入/『シェイクスピア物語』の執筆から刊行まで/ラム姉弟のその後/2 劇から物語へ/いかに子供に文学を伝えるか──作品の選別と「序文」/物語はどのように始まるか──『夏の夜の夢』の冒頭/「じゃじゃ馬」とは誰のことか/語り手の役割──『リア王』における解説者・進行役/『マクベス』における人物心理の解説/原作から消えたものは何か──『ヴェニスの商人』の小箱選びの挿話/消えた『ハムレット』の独白/3 メアリの喜劇とチャールズの悲劇/和解と癒しのテーマ(1)──『テンペスト』の場合/和解と癒しのテーマ(2)──『お気に召すまま』の場合/運命と諦念のテーマ(1)──『ハムレット』の最期/運命と諦念のテーマ(2)──『オセロ』の転落/散文化されるシェイクスピア/第3章 映画の中のシェイクスピア──『ヘンリー五世』『蜘蛛巣城』 山智成/1 ローレンス・オリヴィエの『ヘンリー五世』/シェイクスピアと映画/読書から視覚芸術へ/売れないトーキー・シェイクスピア/ローレンス・オリヴィエの『ヘンリー五世』登場/台詞が話される空間/いかにシェイクスピアの台詞を撮るか?/カメラを引くこと/「もう一度突破口へ」の撮り方/発声と映像の変化/オリヴィエの台詞回し/映像の更なる変化/オリヴィエのヘンリー五世とシェイクスピアのヘンリー五世/シェイクスピアの台詞の重層性/2 黒澤明の『蜘蛛巣城』/『マクベス』前半のあらすじと特徴/黒澤翻案の独自性/『蜘蛛巣城』前半のあらすじと原作との関係/黒澤はダンカン王殺害をどのように翻案したか?/「三人の魔女」から「一人の妖婆」へ/『マクベス』後半のあらすじと特徴/『蜘蛛巣城』後半のあらすじと原作との関係/一つになった後半の予言/宴の場面と能の意匠/『田村』と『蜘蛛巣城』の最終場/荒涼とした『蜘蛛巣城』の世界/最後の反乱を率いているのは誰か?/武時の敗北と最後のコーラスとのギャップ/時空を超えた交流/あとがき/引用・参考文献
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