内容説明
尊皇攘夷の大義を掲げ、幕府に立ち向かった志士たちの蜂起は、時勢を見誤った暴挙だったのか。明治維新前夜の短くも熱い戦いを描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
111
奈良県民として、天誅組の変をどう認識するのか気になっていた時に、タイムリーな出版。天誅組の変(とそれに続く生野の変)は、歴史の仇花だったのか、明治維新の先駆けだったのか…。郷土史家の著者は詳細に事実関係を組み上げ、歴史家としての客観的な視点を失わないのは立派。私など、攘夷親征・大和行幸の中断、八月十八日の政変、朝廷による追討の触書、十津川郷士の離反など、悉く暗転する状況に翻弄される志士たちに思わず感情移入してしまうのだが、でも冷静に考えると、やっぱり稚拙な決起だったというのが本当のところなんだろう。2023/05/28
パトラッシュ
99
奈良の歴史研究者が地元の大事件である天誅組の変の再評価を図った本だが、なぜ明治以降に維新の先駆とされてこなかったのか。後の明治天皇の叔父中山忠光が、幕末最初の反幕府挙兵の頭目となった点が鍵と思える。その行動次第では睦仁親王の皇位継承権剥奪にまで発展しかねず、短期間で鎮圧され一部尊皇攘夷志士の暴走となって安堵したのは父親の中山忠能だったのでは。天皇の家系にテロリスト紛いな人物がいたとは、当時でも公言しにくかったはずだ。関係者の大半が死んだので、これ幸いと口を噤んだとすれば歴史と政治の生臭い関係が見えてくる。2023/04/08
HANA
76
天誅組の変に関しては、幕末攘夷の熱気に当てられ志士が暴走、すぐに鎮圧された事件という認識。生野の変に関してはそれまでその存在すら知らなかった。本書によってそれらのイメージは一編。天誅組の一件は今日との政治と密接に絡み合い、場合によっては勝算も有り得たのだな。政変とその後のぐだぐだ具合によって目も当てられない結果になったけど。生野の変こそ様々な暴走によって取り返しがつかなくなった極致を見ているよう。幕末史の一頁楽しめました。読んでいて草莽という言葉が思い浮かぶけど、やはり野にあって出来る事は限られてるなあ。2023/03/26
skunk_c
63
大概の高校の日本史の教科書(山川の赤本ならでてたかも)にはこのふたつの事件は取り上げられておらず、特に天誅組の変は直後の八月十八日の政変の後ろに隠れてしまっているのだが、本書できわめて丁寧に紹介されている内容から、大和行幸から政変に至る歴史過程がぐっと立体的に見えてきた。本書の主人公とでもいうべき平野国臣は、大藩が動かねば倒幕は難しいと考えていながら、結局は実質的には崩壊してしまった生野の変に関わって処刑される。著者は彼の先見の明を讃えるが、むしろ激動の歴史に翻弄された人物としてもっと知られて良いと思う。2023/07/11
Shoji
35
異国の船が日本を脅かすようになった幕末、過激な尊王攘夷派は天皇の名のもとに幕府を攻撃する。大和の地においても、天誅組が気勢を上げた。幕府の天領を襲撃し私設政府を設置した。しかし、天皇は自ら指揮を執って外敵と戦う意思をもたず、それは幕府の仕事と態度を軟化させる事態に。果たして尊王攘夷派の志士たちは、やがて失脚。天誅組も一転して幕府に負われる身に。挙句、全員が戦死。長州・薩摩・土佐といった藩が勢いづき討幕を果たす5年前の出来事だ。天誅組は性急過ぎだったのかなあ。歴史の機微だなあ。2023/09/12
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