内容説明
日本にいまだ残る「部落差別」を丸ごと見つめ、かつてないドキュメンタリー映画として多くの観客を集めた『私のはなし 部落のはなし』監督による初エッセイ。大阪芸術大学での原一男監督の講義から学んだこと、若松孝二監督の撮影現場での体験、屠場(とじょう)とそこで働く人々を写した初監督作品『にくのひと』(2007年)が各地で上映され好評を博すも、劇場公開を断念し作品を封印せざるをえなかった経験、そこから12年を経て、今作公開に至るまでの歩みを綴る。プロデューサーの大島新氏、配給会社「東風」の木下繁貴氏との鼎談、角岡伸彦氏の解説を付す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
112
大阪芸大在学中に屠場を舞台にした「にくのひと」で注目されながら上映中止という蹉跌を経て、15年後「私のはなし 部落のはなし」を制作した著者。本書で、部落問題とドキュメンタリーのあり方に対する著者の考えが示される。「部落問題は差別する側のフィクションである」との仮説は深い。「差別されるかもしれないという漠然とした不安」に苛まれる部落の人たちの対話が中心の作品に、直接的な反差別のメッセージがないと批判を受けるも、「「答」を出すのではなく「問い」を立てること」というドキュメンタリー映画監督の信念を静かに語る。2023/06/04
今庄和恵@マチカドホケン室コネクトロン
18
部落について語ることがメインではなく、「私のはなし部落のはなし」というドキュメンタリー映画の作者による制作譚。映画ってこんなふうに作るのか、思考をいかに目に見えるものに作り上げていくのか、その工程は汎用性があると思えた。部落問題に携わるようになったきっかけが牛丼屋でのアルバイトとは。きっかけはどこにでも誰にでも同じようにある。「運命は出会いまで」というシュタイナーの言葉そのもの、ただの出会いをいかに切れないザイルに編み上げていくか、その意思を持てることこそがギフトなのだろうな。2023/12/21
ひさちゃん
7
一気読み。満若監督がこの映画制作にとう向き合ってきたのかが記されている。自分は映画好きで、特にドキュメンタリーが好きだ。もちろん、この映画も観た。観終わったあと、もやもやして完結せず、自分もこの対話の中に入り込んでいるのだと気づく。また、部落差別というテーマに限らず、この本にはドキュメンタリー映画をどう撮るかという監督の思いや考えも書かれていて、なるほどドキュメンタリー映画とはこうやって作られるのかと新鮮。今後の満若監督の作品が楽しみだ。そして、機会があれば再びこの映画を観たい。2023/03/01
せい
4
とても評判のよい映画のようだったので観たかったけど内容の関係で配信等の予定はないということだったから読んでみたが、映画をなぞる訳ではなく、思った以上の内容!ドキュメンタリーってそうやって作るんだなあという舞台裏が分かるし、なにより前作が関係者と拗れてお蔵入りになった若手監督が今度は対話をキーワードに(オープンダイアローグを参考にしたそうだ)再度部落差別という同じテーマの映画を撮るまでの人生の軌跡がとても面白い。まさに「わたしのはなし 部落のはなし」だ。監督の構えない姿勢の「柔らかさ」がとても印象に残る。2023/10/22
U-Tchallenge
3
映画は見たいなと思いながらも、まだ巡り合うことができていない。それなら本だけでもと思い手に取った。満若さんが部落差別に対してどのように考え、そしてどのように対峙してきたかということがよくわかる内容であった。「にくのひと」の制作過程で出会った中尾さんの言葉がとても印象的であった。自身の差別性に目を向けてそれを自覚する。その自覚をもって自身は差別とどう向き合うのか、それに尽きるように思った。ますます映画を見てみたい気持ちが強くなった。2025/08/18
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