筑摩選書<br> 敗者としての東京 ──巨大都市の「隠れた地層」を読む

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筑摩選書
敗者としての東京 ──巨大都市の「隠れた地層」を読む

  • 著者名:吉見俊哉【著者】
  • 価格 ¥1,815(本体¥1,650)
  • 筑摩書房(2023/02発売)
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  • ISBN:9784480017680

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内容説明

富と人口が集中し、世界最大規模を誇る都市、東京。だがこの都市は、少なくとも三度、占領されてきた。1590年の家康、1868年の薩長連合軍、1945年の米軍によってである。凹凸をなすこの都市の地形と結びつきながら、過去の「敗者たち」の記憶は、歴史的な地層をなしてきた。縄文の古代から現代までを視野に入れ、地球史的視座と家族史的視座とを往還しながら、江戸=東京に伏在する「敗者たち」の記憶の水脈を探り当て、「勝者」であり続けようとする令和の東京とは異なる可能性を探究した、比類なき「江戸=東京」論!

目次

序章 東京とは何か──勝者と敗者のあいだ/パンデミックのなかの東京離れ?/「勝者」としての東京/東京集中の臨界はどこにあるのか/少なくとも三度占領された都市・東京/歴史の遠近法を導入する/第I部 多島海としての江戸──遠景/第1章 クレオール的在地秩序/縄文の多島海と渡来人文明/関東平野を遡上する渡来人たち/クレオール化する渡来人たち/秩父平氏が支配した利根川流域/武家政権により周縁化される在地勢力/第2章 死者の江戸、そして荘厳化する外縁/巨大都市・江戸のインフラ基盤/「戦乱の時代」の終わりと死の管理/江戸における寺院のトポグラフィー/上野・浅草の寺町化と東叡山寛永寺の荘厳化/海人たちの時代の終わり/第II部 薩長の占領と敗者たち──中景/第3章 彰義隊の怨念とメモリー・ランドスケープ/三度の占領で反復されたパターン/戊辰戦争における「賊軍」の近代/彰義隊士たちの死骸と記憶/メモリー・ランドスケープの変容/戦場から博覧会場へ──上野の近代/第4章 博徒と流民──周縁で蠢く敗者たち/博徒次郎長と咸臨丸兵士の遺体/天田愚庵による「清水次郎長」の創造/天変地異の中で増殖する無宿人/体制の緩みと博徒の水平ネットワーク/幕末江戸における博徒と遊女/第5章 占領軍と貧民窟の不穏──流民の近代をめぐる眼差し/1 東京と都市下層/江戸占領軍が抱えていたリスク/戸籍の発明と弾左衛門支配の終焉/変質する都市下層コミュニティ/2 貧民を語る眼差し/貧民窟を探訪する敗者のジャーナリズム/変装する桜田文吾と貧民窟の人々/エスノグラフィーの視線と社会調査の視線/敗者の眼差しとサバルタンの語り/第6章 女工たちは語ることができるか/1 周縁化される紡績女工/サバルタンとしての女工たち/『日本之下層社会』における女工の語り/紡績工場と士族救済/紡績の大規模工業化と女工の周縁化/2 逃走と争議、そして馴致/集団逃走する女工たち/女工のセクシュアリティをめぐる語り/「逃走」から「争議」へ/「争議」から「バレーボール」へ/3 女工たちは語る/『女工哀史』を語ったのは誰か?/女工たちは語っていた/第III部 最後の占領とファミリーヒストリー──近景/第7章 ニューヨーク、ソウル、東京・銀座──母の軌跡/三度目の占領と歴史の遠近法/母、ニューヨークで生まれる/祖父母の離婚とソウルでの女学校時代/ソウル出奔と日本本土への引き揚げ/焼け野原の東京と木挽町の「旅館」/ふたつの文化の狭間で/第8章 学生ヤクザと戦後闇市──安藤昇と戦後東京/1 東大久保の不良児/チエちゃんのところはいいわよね/「死を背景にした暴力」としての安藤昇/東大久保という場所──不良から愚連隊へ/2 愚連隊たちの東京──ヤクザというエートス/闇市東京と極道のアメリカニズム/ヤクザというエートス──丸山眞男の卓見/万年東一と安藤昇──愚連隊を語る方法1/花形敬と安藤昇──愚連隊を語る方法2/清水次郎長からの反復と転位/第9章 「造花」の女学校と水中花の謎──山田興松とアメリカ進出/曾祖父・山田興松とは誰か?/女子教育と手芸としての「造花」/山田興松の日本美術女学校/対米進出と「造花」という輸出産業/第10章 原風景の向こう側──『都市のドラマトゥルギー』再考/再び、都市のドラマトゥルギーへ/渋谷裏街としての神泉・円山町/新宿裏街としての東大久保/モザイク都市としての新宿/終章 敗者としての東京とは何か──ポストコロニアル的思考/1 敗者への意志──山口昌男と鶴見俊輔/「判官贔屓」と敗者への想像力/日本近代と敗者の精神史──山口昌男の敗者論/「敗者」への壮大な意志としての鶴見俊輔/2 敗者としての戦後──加藤典洋・中村秀之・長谷正人/戦後日本と敗者の想像力──加藤典洋の敗者論/ポスト占領期の映画における敗者/山田太一のテレビドラマにおける敗者/3 近代と敗者の思考──シヴェルブシュとワシュテル/敗者におけるパターンの反復──ヴォルフガング・シヴェルブシュの敗者論/大征服時代と敗者の想像力/4 東京における敗者の想像力とは何か/コンタクトゾーンとしての都市/東京のポストコロニアリズムは可能か?/註/あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

たま

58
関東地方の「クレオール的在地秩序」は江戸幕府によって、江戸幕府は薩長によって倒され、太平洋戦争後は米軍に占領される、そういう敗者として東京を見る試み。広汎な対象を扱っているため論を尽くしているとは言い難いし、無理な議論、性急な結論もあるが、私にとっては面白いトピックが幾つかあり、興味深く読んだ。例えば武士の起源とも関係する江戸幕府以前の関東地方。明治初期の博徒と流民、占領期のやくざ。安藤昇(著者の親戚)に頁が費やされているがそれよりも現代へ続く暴力・テロ肯定の流れとして掘り下げるべきトピックと思う。2023/05/20

harumi

2
初めての吉井俊哉さんの本だったので難しい箇所がいくつかありましたが面白くて一気読みしました。特に古代から江戸まで、明治維新から敗戦後の東京の歴史は膨大な情報量がわかりやすくまとめられていて圧巻です。ただ、ファミリーヒストリーの章はこれがどう勝者と敗者に繋がるのか不勉強な故ピンときませんでした。吉井俊哉さんの本をもっと読まないといけませんね。2023/09/05

takao

2
ふむ2023/06/09

horada

0
*2024/01/28

koba23

0
3度敗者になったというところの説明までは良かったが、後半のファミリーヒストリー的なところはちょっと私にはよくわからなかった。2023/09/10

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