内容説明
「自分が機嫌よくいられる場所」を見つけよう
「最悪の時代」を生き抜くためのウチダ流哲学
【本書の内容】
特に今の若者たちはほんとうに厳しく、生きづらい時代を生きていると思う。
僕が10代だった1960年代は明るい時代だった。
米ソの核戦争が始まって世界が滅びるのではないかという恐怖が一方にはあったが、そんなことを日本人が心配しても止める手立てもない。
「どうせ死ぬなら、今のうちに楽しんでおこう」という半ばヤケクソの、ワイルドでアナーキーな気分が横溢していた。
だから、自由で、民主的で、いろいろな分野で次々とイノベーションが起きるとても風通しのいい時代だった。
それに比べると、今の日本の社会はとても風通しが悪い。息が詰まりそうだ。
誰もが「生きづらさ」を感じている。世界は移行期的混乱のうちにあり、あらゆる面で既存のシステムやルールが壊れかけているのに、日本の社会はその変化に柔軟に対応できず、硬直化している。
当代きっての思想家・内田樹が、この国の閉塞感の原因を解きほぐし、解決のヒントを提示する。
巻末に「あとがき リーダビリティとは何か」を加え、待望の文庫化!
目次
第1章 矛盾に目をつぶる日本人
第2章 気が滅入る行政
第3章 ウチダ式教育再生論
第4章 平成から令和へ生き延びる私たちへ
第5章 人生100年時代を生きる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mukimi
136
私はこれまで生きづらさの原因を自己の内部に求めてきたが、実はそれは自分のことばかり考えすぎた狭い視野であり、属する共同体の特徴や社会の雰囲気など外界にも原因を探すことも有意義だと本書で知る。どうせ自分1人には何も変えられないなら、関係ない社会問題は放置して貰えるものだけ貰うために流れに逆らわないっていう空虚感を抱いたイエスマンになりつつあった。日本の大学の抱える問題、海外から見た日本など、無知を恥じながら視野の拡張に感謝。自分が機嫌よくいられる場所=詰まりや痛みがなくて可動域が大きくとれる場所を探せ。2024/01/28
hiace9000
106
作中マルクスの書物を引き合いに出し、その天才的説明能力をリスペクトする一節があるのだが、まさに私にとって内田さんの著書は「頭にキックが入り」「脳が活性化する」―、そんな感覚なのだ。小気味よい潔さで"ここまで言ってしまう"勢いと、文体の疾走感、鮮やかな論証と深い得心を与える論理に、自然と心が熱くグルーブし、誰かれ彼かまわず語りたくなる、否、語り合いたくなる。内田テクストこそ、私にとってのロックンロールなのである。若い世代からそうでない世代まで、自分のなかにある生きづらさの「正体」を見つめる読書になるはずだ。2025/10/21
ムーミン
34
オープンマインドでいることが学ぶ人にとって最も大切な構え。わからないのはいいこと。自分の知的な限界を超えるチャンスに遭遇したということ。コミュニケーションの本質とは。学校教育の中で大切にしたいことにたくさん出会えた一冊でした。2025/10/02
えいこ
15
久しぶりの内田樹先生。ドライブのかかった文体は健在。後半の文章は、繰り返しもいつくかあり、やや冗長なものもあったが、前半は次々と膝を打つ納得感。現代日本について、「空虚感を抱えるイエスマンの増産」「諦めの感情が醸成されるのを待つだらだら合意形成が基本形」腑に落ちる。「実学は平時の学問、人文学は広々としたタイムスパンで世界を俯瞰する乱世の学問」納得。2023/02/20
Akki
13
自分のことを棚に上げて書くが、身の回りで賢く鋭いモノの見方・考え方を出来る大人に出会わなくなって久しい。私が内向きになっている可能性は念頭に置く必要があるものの、多分、勘違いではない。より正確に言えば、賢しげにでも持論を言い合う人々が減った。そういうことはネットでやれば良くて、市井で面と向かってやるのはナンセンスになったのかも知れないし、持論を展開できるほどの知的基盤が無いのかも知れない。原因を一つには決められない。ただ、身近に賢い人がいてくれるかどうかは、誰にとっても本当にものすごく大切だと思うのだ。2024/08/19




