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内容説明
炎上を超えて、小山田圭吾と出会いなおすために。
コーネリアスの小山田圭吾が東京五輪開会式の楽曲担当であることが発表された途端、過去の障害者「いじめ」問題がSNSで炎上。
数日間で辞任を余儀なくされた。
これは誤情報を多く含み、社会全体に感染症のように広がる「インフォデミック」であった。
本書は当該の雑誌記事から小山田圭吾の「いじめ」がどのように生まれ、歪んだ形で伝わってきたのかを検証するジャーナリスティックな側面と、日本におけるいじめ言説を丁寧に分析するアカデミックな側面から、いまの情報流通様式が招く深刻な「災い」を考察する現代批評である。
目次
第1章 小山田圭吾は21世紀のカラヴァッジョなのか
第2章 「ロッキング・オン・ジャパン」はなぜいじめ発言を必要としたのか
第3章 「いじめ紀行」の枠組みを解きほぐす
第4章 「いじめ問題」への囚われのなかで
第5章 匿名掲示板の正義が全国紙の正義になるまで
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
32
キーワードは「物語」ということかなと思った。音楽における雑誌・ジャーナリズムが小山田圭吾を「いじめの主犯」というイメージで飾る。そのイメージ/バイアスに沿って記事が作られ、それを補強する記事が新たに生み出され、それがコピペとなって手軽に(ファクトチェックを怠ったまま)シェアされる。「いじめ」という言葉に飛びつき、そこから正義感を燃え上がらせた人たちに恐怖するのはもちろんだ。だが、そうしたジャーナリズムが生み出す「物語」の魔性の力にぼくはどれだけ自覚的であるか。新手の「いじめ」や「渋谷系」試論としても読める2024/01/06
ばんだねいっぺい
28
複雑な物事をできるだけ単純化したいという欲求。メディアそして受け手のファクトチェックの杜撰さ。多数決マジックによる私刑の正当化。2023/06/05
かふ
17
自己プロデュースの失敗ということだが「東京オリンピック」に参加した時点で叩かれると予想出来ないのか?小山田圭吾を正当化するあまり鬼畜系とか擁護するのはどうなのか?なんかポリシーがなさすぎというか、鬼畜系がブームならそれに乗ってしまうこと自体が安易な人なのではと思ってしまう。小山田圭吾に興味もなく、どうでもいい話なのだが。ネットリテラシーの本なら他にいくらでもあるし、あえてこの本を読む必要は小山田圭吾ファンしかないように思う。オザケンはそういうことをしない人なんだし、叩かれて大人になるということか?2024/01/15
kuukazoo
13
2021年夏に小山田氏が東京五輪開会式の楽曲を任されると発表された途端過去の障がい者いじめを語った雑誌記事がSNSで拡散されて炎上、大手メディアも尻馬に乗った騒動を掘り下げ、恣意的に切り取られた情報が本来のそれとは違う歪められた形で広がっていく「インフォデミック」の実態を検証する。関連して90年代の悪趣味系鬼畜系カルチャーやいじめ問題にも言及。特にいじめについて世間が硬直化したイメージしか持てなくなっていることが逆に当事者を苦しめているのではというのは興味深い。物事を単純化してわかった気になることは怖い。2023/06/17
緋莢
11
図書館本。2021年、東京五輪開会式の楽曲担当である小山田圭吾が、過去に雑誌に掲載された〝いじめ”関連について、炎上し、辞任することになった。このことについて、雑誌『ロッキング・オン・ジャパン』や『クイック・ジャパン』、ブログの切り取りにも問題があるというのは、騒動の直後くらいから吉田豪が指摘していたのを目にしていました。著者はその辺についてさらに詳細に追っていますが、小山田圭吾ファンのようでその熱量が凄かったです。ただ、その熱量が読者に伝わったかというと疑問(続く2024/11/15