ちくま新書<br> 村の社会学 ──日本の伝統的な人づきあいに学ぶ

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ちくま新書
村の社会学 ──日本の伝統的な人づきあいに学ぶ

  • 著者名:鳥越皓之【著者】
  • 価格 ¥825(本体¥750)
  • 筑摩書房(2023/02発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480075369

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内容説明

日本の村々は、長い歴史のなかで工夫に工夫を重ね、それぞれの風土に根ざした独自の生活パターンと人づきあいのあり方をかたちづくってきた。そのしくみや特徴をつぶさに観察してみると、村を閉鎖的で前近代的なものとみなすステレオタイプこそ、むしろ古びたものにみえてくる。コミュニティの危機が叫ばれる今日、その伝統を見つめなおすことは私たちに多くの示唆を与えてくれるのだ。日本の村に息づくさまざまな工夫をたどり、そのコミュニティの知恵を未来に活かす必読書。

目次

はしがき/第1章 村の知恵とコミュニティ/1 村の知恵/人間関係に迷う/知恵の発光体/コミュニティとは/2 コミュニティの構造/なわばりの否定/なわばりと居場所/他者への配慮となわばり/孤立化とあたたかみ/コミュニティの典型としての村/第2章 村とローカル・ルール/1 村とは何か/ふたつの村/地域経営としての村/2 ローカル・ルール/住民を強制すること/つとめ/作法という名のローカル・ルール/3 生活組織としてのコミュニティ/町内会/小学校区のコミュニティ/第3章 村のしくみ/1 村のタテの構造と関係/家格と年齢/目上・目下の判断/親分・子分/庇護と奉仕/2 村のヨコの関係/現実と幻想と/技と作法/ヨコの関係の強い村落構造/信仰的な講の裏のはたらき/3 人間と自然/採取から開墾へ/人間参加型自然/山が荒れる/肥料/村の空間的構成/村の山と水/自然と争わない/4 村での仕事と権利/トレードオフと話し合いの重要性/リーダーを悪者にしてもよい理由/村の生活維持/共同労働と共同占有/個的役割とリーダーシップ/文化型リーダー/利用権に対する配慮/フェイス・トゥ・フェイスの現場/第4章 村のはたらき/1 交換不可能性とエゴイズム/交換不可能性/エゴイズムを抑える/2 弱者救済/家族における弱者救済/三世代家族の長所/やわらかい三世代家族/村における弱者救済/弱者/に与える特権/子どもたちも働く/3 災害対応/地震への対応/村での水害/火事──許されない失敗/4 村の教育──平凡教育/平凡教育と非凡教育/カツオの変身/知恵としての平凡教育/学力とは/第5章 村における人間関係/1 あいさつ/簡便なコミュニケーションの手段/あいさつの型/呼びかけ/2 不公平を嫌う/損をしない/「不公平」という切り札/3 話し合いと意思決定/意思決定のかたち/寄り合い/全員一致制/第6章 村の評価と村の思想/1 村の意図的消滅論/個人の自由を束縛する/近代文学における個の自立論/2 村の自然消滅論/近代化のプロセスとして/民主主義と権威主義/村と資本主義的生産/近代技術のプラス・マイナス/過疎化の危機/3 Society 5.0と異なる方向へ/Society 5.0とは何か/自然を活かしたつきあい/当たり前の平たい人間関係/自由主義と共和主義/反君主制としての共和主義/村は共和主義か?/村の知恵を活かす/あとがき/注/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

tamami

50
本書が対象とする村は、江戸時代以来の村、現在で言う自治会あるいは地域コミュニティに近い。副題に「日本の伝統的な人づきあいに学ぶ」とあるように、村の中で育まれてきた、自然とも仲良くし「つとめ」の気持ちで仲間とつきあい、共に生きていくという生き方の智慧について記す。村社会におけるタテとヨコの人間関係、あいさつの型、様々な「講」の意味や寄り合いの働きなど、普段は何気ない行動の形としてしか意識することがなかった事柄の持つ「裏」の意味も教えられる。「近代」が問い直されようとしている今、古きを温ねる意義も少なくない。2023/04/11

ぷほは

12
学会会長職としての仕事の片手間ではあるだろうが、エッセイとして質が高く、さらりと書かれている情報の奥行きと広がりが素晴らしい。行間を読む訓練として学生に勧めたいと同時に、新自由主義者をおとぎ話の「猿」に見立てる語り口がいちいち社会学者らしくて感動する。こうした好々爺的な書き手による柔らかい豊穣な文体を拝める機会も徐々に減ってきているように思う。それは私のライフステージの問題なのか、業界の問題なのかは微妙なところだが、おそらく両方なのだろう。それよりさらに遠い今の学生たちに、この感覚を遺しておいてあげたい。2023/05/07

sakanarui2

7
家族の本棚でみつけた本。 地域活動をする中で、農村の集落にルーツがある自治会と、新規住民との話の噛み合わなさに困ってたので、大いに役立ちそうな情報満載でありがたかった。 村のポジティブな側面や、村を守りたい人々の心理、保守の思想の片鱗に触れ、自分がいまま間違ったアプローチばかりをしてたことにも気付くことができた。 とはいえ、慣れない村の掟には拒否反応が出ちゃうんだよなあ。序列とか根回しとかめんどくさ…。2025/05/13

Aby

7
久し振りに刊行された「農村社会学」.かつての「農村」は産業構造の変化と都市部の拡大により混住化が進んで,農村らしい農村ではなくなった.鈴木榮太郎のいう「村の精神」はどこへいってしまったのか……という,ところを論じてくれている.ありがたい.2024/07/11

そ吉

6
筆者は日本社会学会会長職にあるが、本書は学術書ではなく社会学を研究した筆者がファールドとした村に関しての随筆的な本である。 勿論、随所にある考察は先行研究の所在も明らかにしており、本書を入門書として村社会の構造を学ぶには良いだろう。 ところで、村の基底には封建的な搾取面のみではなく、奉仕による生活補償という保険的なものがあるという考えは現代ではボランティアなどの生活支援型のコミュニティに関する示唆ともなるかもしれないと思った。 ★★★☆☆2023/04/15

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