筑摩選書<br> 平和憲法をつくった男 鈴木義男

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筑摩選書
平和憲法をつくった男 鈴木義男

  • 著者名:仁昌寺正一【著者】
  • 価格 ¥1,705(本体¥1,550)
  • 筑摩書房(2023/02発売)
  • ポイント 15pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480017659

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内容説明

福島県出身の法学者・弁護士・政治家である鈴木義男は、東北帝国大学教授を務めるも、軍事教練に反対して教壇を追われ弁護士に転身。河上肇ら治安維持法違反者の弁護などで活躍後、戦後は衆議院議員として帝国憲法改正案の審議に携わる。鈴木の提案から第九条に平和の文言が加わり、GHQ草案にはなかった第二五条の生存権が追加された。「ギダンさん」と呼ばれ親しまれた鈴木義男の、平和憲法成立への知られざる努力を含む多方面の活躍と、その波乱の生涯を描く初めての本格評伝。

目次

はじめに/鈴木義男はなにをした人?/鈴木の生き方と思想を通して見えてくるもの/第一章 キリスト教的環境の中で──誕生から東北学院卒業まで/1 誕生から小学校卒業まで/誕生と小学生の頃/東北学院入学の動機となった父の布教活動/父の臨終/2 東北学院普通科(中等部)での五年間/シュネーダー院長の薫陶/東北学院労働会での体験/仙台市内中学校弁論大会で優勝/『中学世界』の懸賞論文でも一等賞/卒業にあたって──キリスト教への思いと将来の職業のこと/エピソード1「ギダン」と呼ばれる/第二章 大正デモクラシーとの出会い──二高入学から東京帝大助手任期終了まで/1 二高(旧制二高)で学ぶ/成績優秀な苦学生/弁論部ではリーダー的存在/視野の拡大と大正デモクラシーへの関心/「忠愛之友 楽部」でも活動/2 東京帝国大学で学ぶ/学者を目指して/吉野作造に師事──民本主義の受容、そして学者の道へ/3 学者としてのスタート/助手時代の始まり/ワイマール憲法への強い関心/「人類の社会的解放の第一声」としてのワイマール憲法/大正デモクラシーからの強い影響/東北帝国大学法文学部教授に内定/エピソード2結婚、そして二人の娘の誕生/第三章 欧米留学とその「成果」──留学から東北帝国大学辞職まで/1 留学の目的と行程/留学時の国際情勢/留学の目的・期間/留学の行程/2 留学先で学んだこと/ドイツとフランスから送られた論稿/ヨーロッパ諸国の戦禍を目の当たりにして/法律哲学と労働大学への強い関心/国際法・国際連盟への関心/アメリカで語られた鈴木の平和思想/3 東北帝国大学法文学部教授に就任/学内外で活躍する「花形教授」として/「人格的生存権」論/軍事教育政策への批判/4 無念の辞職/「赤化教授」追放の中で強められた辞職への圧力/「不本意な出版事件」/東北帝国大学評議会での辞職決議/三人の恩師を訪ねて──弁護士への転身/第四章 弁護士として──無名弁護士から人権派弁護士への飛躍/1 弁護士生活の始まり/法律事務所開設と今村力三郎への師事/社会情勢に伴う弁護活動の変化/2 弁護士時代・第一期(一九三〇~一九三三)/「共産党シンパ事件」の弁護とその影響/社会的関心を集めた河上肇の弁護/「京大事件」への想い/3 弁護士時代・第二期(一九三四~一九三七)/帝人事件の弁護/志賀暁子堕胎事件の弁護/当時の鈴木に対する世間の評価/人権擁護および司法改革に関する提案/4 弁護士時代・第三期(一九三八~一九四五)/「労農派教授グループ」の弁護/一三万字にも及んだ有澤廣巳の「弁護要旨」/修養同友会事件の弁護/キリスト教牧師の弁護/5 人権擁護の姿勢を貫く/エピソード3法廷の外でも貫かれた「人間尊重の精神」/エピソード4白河への家族の疎開/第五章 新憲法制定・司法制度整備──政治家への転身から法務総裁辞任まで/1 政治家への転身/GHQの非軍事化・民主化政策へのカルチャー・ショック/日本社会党結成に向けての動き/2 新憲法制定への大きな貢献/「制憲議会」の本会議での発言/帝国憲法改正案委員小委員会(芦田小委員会)/3 新憲法ができるまで/九条への平和条項の挿入/二五条一項の生存権規定の挿入/一七条(国家賠償請求権)と四〇条(刑事補償請求権)の挿入/六条二項(最高裁判所長官の任命規定)の挿入/新憲法の公布・施行と鈴木の決意/4 「国民生活の教科書」としての新憲法/『新憲法読本』にみる鈴木のメッセージ/鈴木の考える新憲法の特徴/日本国憲法は日本国民の「誓い」である/「人類文化の理想」としての平和の実現/5 国民の権利を守るために/三権分立の確立と維持/基本的人権の保障/6 司法制度整備・改革への尽力/司法大臣・法務総裁への就任/GHQと日本政府のパイプ役として/最高裁判所長官の選出へ向けて/人権擁護局の設置/7 「昭電疑獄事件」への対応──指揮権を発動せず/エピソード5司法大臣就任時の家庭の様子/エピソード6A・オプラーとの家族ぐるみの付き合い/第六章 左右対立の社会党の中で──中央執行委員辞任から衆院選挙落選まで/1 社会党中央執行委員の辞任/衆院選における社会党の大敗と中央執行委員の辞任/左派の台頭と福島県知事選立候補への誘い/2 民主社会主義の啓蒙・普及/民主社会主義の啓蒙と普及を目指して/民主社会主義連盟の結成と右派社会党中央執行委員への就任/3 平和憲法の擁護/鈴木の再軍備批判の要点/「芦田・清瀬理論」批判/鳩山内閣による憲法調査会設置への批判/4 初めての落選/エピソード7中国訪問と愛娘への思い/第七章 晩年──新たな目標へ/1 再び学者・教育者へ──青山学院大学教授への就任/2 政治家への復帰──民主社会党結成への参加/3 大逆事件の再審請求/4 東北学院理事長として/5 昇天──キリスト教に導かれて/結びにかえて/あとがき/参考文献/鈴木義男著作一覧/鈴木義男略年譜/図版出典・所蔵一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Francis

15
鈴木義男の事は全く知らなかった。読んでみると鈴木はとても優れたキリスト教社会主義者であり、人権活動家でもあった事が良く分かる。こんなすごい人がなぜ忘れられてしまったのだろう。吉野作造の薫陶を受け、東北大教授になるも軍事教練批判などの言動が危険視されて辞職に追い込まれる。しかし弁護士資格を生かし人民戦線事件などの言論・思想の自由を弾圧された人たちの弁護により多くの人を救う。戦後国会議員として自らの経験を活かし憲法25条の生存権、9条の平和条項などを実現。この本の出版を機に鈴木の再評価の声が高まって欲しい。2024/03/28

Noribo

12
鈴木義男は東北帝大教授~弁護士として戦後は政治家として活躍。衆議院の芦田小委員会の主要メンバーとして制憲審議に携わり、GHQ草案を元にした内閣原案で明確でなかったあるいは存在しなかった25条1項生存権規定、17条国家賠償請求権、40条刑事補償請求権の挿入を発議しました。9条平和条項、6条2項最高裁長官の任命規定は鈴木の意見で現在の条文に。私は本書を読むまで鈴木の存在すら知りませんでしたが、新憲法の平和主義、人権尊重の精神の明確化に貢献した偉人で、多くの人に鈴木の存在を知ってもらいたいと思いました。2023/05/30

たっちゃん

0
平和的生存権 戦争の違法化と国際協調主義 基本的人権の保障 司法制度整備・改革 指揮権を発動しない決断 日本国憲法は、アメリカに押し付けられたとの風説がある中、外圧を利用して理想の民主主義を実現しようとした男の生きざまを描いている。2024/03/28

Masataka Sakai

0
GHQの民政局にはふれず2023/08/03

Masataka Sakai

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GHQの民政局にはふれず2023/08/03

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