内容説明
わたしは物語を作るのが好き.11歳の少女メアリーは,島のだれとでも手話で話し,いきいきと暮らしています.一方馬車の事故で死んだ兄さんのことが頭を離れません.ある日傲慢な科学者に誘拐され,ことばと自由を奪われて…….手話やろう文化への扉を開く,マーサズ・ヴィンヤード島を舞台にした歴史フィクション.
目次
物語の前に
プロローグ
Ⅰ
Ⅱ
作者による解説
訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
89
児童書。YA。史実を元に書かれたフィクション。舞台は1805年のアメリカ、ボストンの南にあるマーサズ・ヴィンヤード島のチルマーク。島では、ろう者と聴者が一緒に生活し、ごく当たり前に手話で会話をしていた。11歳のメアリーは感受性豊かで手話で物語を作り語ることが大好きな少女。兄が事故で亡くなりメアリーは聴者である母親の関係が悪くなる。そんな中、島に調査研究にきた科学者アンドリューに誘拐されて、メアリーはボストンで酷い差別にあう▽聴こえないというだけで、知恵がないと思われたり差別されることの不条理がこわい。2023/05/25
しいたけ
89
ボストン南東部マーサズ・ヴィンヤード島を舞台にした物語。その島はろう者の割合が多く聴者も会話に当たり前に手話を使っていたという。当時のアメリカは無知によるろう者への差別が酷いが、島は別天地。だが島にも先住民族や黒人に対する差別は存在する。その問題提起かなと甘くみていたら、物語は兄の死に関わること、そしてあり得ない事件へと進んでいく。正直、少女の身に起こる事件に気分が悪くなった。悪人が悪人に至る道程を想像できない話は私を不安にさせる。是非読んでいただいて、この悪魔はどういう人間なのかとの考察を教えて欲しい。2022/07/17
がらくたどん
81
19世紀初頭アメリカ、遺伝性の聾が高確率で見られる小島で暮らす中間層入植白人の父母に護られ伸び伸びと育てられた聾の少女が体験する波乱と内省に富んだ物語。健聴者と聾者が差別なく家庭内でも混在する環境だが入植白人と先住民や自由黒人との差別は残る共同体。兄の死で傷つく一家にボストンから来た野心的な若手研究者が「聾の原因を探る」目的で興味を示す。人種的に差別する側である事に心を痛める少女が聾という「普通の特性」だと思っていた事が差別要因になる事実を体験し「普通・常識」の恣意性を強く自覚する過程が素晴らしい。YA棚2023/01/20
茜
73
本書は、かつて誰もが手話で話したという実在の島を舞台にしたフィクションです。メアリーの体験したことを通して、読者はろう者に対する差別と迫害を体験するのですが絶望感がひしひしと伝わってきました。ろう者を扱った本は何度か読みましたが、海外にもろう者と聴者が誰でも手話で会話する地域があったんだと思うと何だか救われた気持ちになりました。著者であるアン・クレア・レゾット自身もろう者であるが故にこのような素敵な物語が書けたのではないかなぁと思いました。とても良い読書体験が出来ました。 2022/09/04
joyjoy
20
「みんなが手話で話した島」を先に読んだので、物語の背景が理解しやすかった。島で、ろう者も聴者も隔てなく手話で話すさまが目に浮かぶようだった。だがそんな島にも、先住民や黒人、アイルランド人への偏見を持つ人はいたのだな。メアリーが我が家に戻って、アンドリューのことも思い出して祈る場面が心に残る。〈自らが与えることによって受け取ることができ、赦すことで赦され、死ぬことで永遠の命に生まれ変わることができる〉。アンドリューを赦せるか?きっと、許せなくても赦すのだ。それによって彼女自身も自分を赦せるのかもしれない。2023/01/10
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