内容説明
フローベール存命中に発表された最後の作品であり、『ボヴァリー夫人』とともに同時代の読者・批評家から例外的な大好評を博した「三つの物語」。18歳のフローベールがピレネー、コルシカ旅行の途中で知り合った女性との灼熱の恋をもとに描き、『感情教育』の母胎となったと言われる自伝的作品「十一月」。今も輝きを放つ二篇に、フローベール研究の第一人者が半世紀前に執筆した秀逸な解説を付す、傑作小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
13
若き(35歳の)蓮實重彦の解説曰く、『3つの物語』は『ボヴァリー夫人』の大きすぎる成功以来苦しんできたフローベールが久々に商業的に成功した短編集。当代のフランスの女中、中世ヨーロッパの呪われた息子、洗礼者ヨハネの処刑と、寓話めいた三つの物語を語る。描写の細やかさと、数十年を一気に語る物語の大雑把さが均衡している。それが、読みやすい複雑さを形成している。『十一月』は初期小説で、青年期の夢想と娼婦との姦通を甘く空しく描き、最後に緩慢な死が訪れる。2023/05/09
佐藤
1
「不可能なものへの何ともしがたいもどかしさ」(「十一月」297)捉えがたい恋ゆえに書き連ねる男と、交わせば交わすほど渇く情婦の運命的な交錯だが、不可能性は二人を挫く障碍というよりはむしろ、二人を駆動させる情熱の核であり梃子である。「美しい上唇と下唇とは、この世の雄弁をそっくり集めたものより価値がある」(301)しかし美しい上唇と下唇が絡み合うことも殆ど稀であるから、やはり不可能なものが混じり合う時激しい悦楽に撃ち抜かれるのは言うまでもない。2023/04/03
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