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内容説明
資本主義が地球を包み込み、圧迫させ、ついには人間を窒息させてしまう現代社会。「包摂」という概念からマルクスの思想を読む決定版!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
116
産業の発展が即ち資本主義とされた時代には、マルクスの思想が有効だった。上部構造と下部構造、労働力の商品化と搾取など、資本主義社会の抱える矛盾や諸問題を分析できたのだから。しかしマルクス主義に基づく社会主義政治が失敗した結果、批判者を失い暴走した資本主義体制が一層奇形化したのも事実だ。こうした事態に対しマルクスの考えを参照し、人間らしい世界をつくる動きに関心を持とうと呼びかける主張は理解できる。しかしAI知能やゲノム編集技術が神の領域を侵すほどまで発展する時期が目前とされる今日では、もはや手遅れではないか。2023/05/27
skunk_c
70
本書の肝は第三章の「包摂」にあると思う。冒頭にある(p.19)「労働は人間の生活を豊かにするはずのものであるのに、資本主義社会では労働力が商品化され、労働過程とその生産物が利潤追求の道具となるために、働く者は自らの労働の主人でなくなってしまう」という説明を読んだとき、入門的シリーズの本書で、この部分で一体どれだけの(過去にマルクスに取り組んだことがない)読者が理解できるのかと疑問を感じた。第二章にこの件の解説もあるがやはり少々難解。やはり『資本論』をコンパクトに解説するのは相当な力業がいると感じた。2023/09/03
Aster
34
危険な本、正しすぎて。2024/02/07
TS10
23
マルクスの生涯と『資本論』の概要を説明した上で、現代において資本主義が人間をいかに「包摂」しているかを説く。筆者の言う「包摂」とは、一方では労働力商品の売り手としての自覚を強めた労働者が、相対的剰余価値の飽くなき向上という資本の論理を内面化していき、他方では、消費社会において、万事につけて買い物客的な姿勢をとる受動的態度が人々の間で慢性的になっていくことを指している。こうした態度を利用して、企業から労働者に「やりがい」を与え、賃金の一部の代わりとするという新たな搾取形態も指摘される。2025/08/08
tokko
21
「資本論」が読みかけで、なかなか理解に苦しんでいるところに、ちょっとでもいいから理解の支えになるものが欲しいと思って読み始めました。もちろん「資本論」の網羅的な解説ではないけれど、いくつか「そういうことだったのね」というところが思えるところがあります。気になるキーワードとしては「資本の他者性」「実質的包摂」でしょうか。19世紀の古典的資本主義では資本の利益と労働者の利益がトレードオフの関係になっていた部分がありますが、現代では労働者が資本の利益を優先させることを疑いません。まさに「包摂」というわけですね。2024/01/07