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内容説明
躁うつ病や統合失調症はもとより、いまや「発達障害」も一般名称化した。もはや「心の病」は特殊ではない風潮の一方、医療現場では何が変わり、何が変わらず、何が起こっているのか。最前線を走り続ける現役医師が、精神医療「内部」の諸問題、精神医療と「外部」事象との問題、精神医療と心理社会的な問題との関連を批評・露呈させる。
第1章 医療の中の精神科
第2章 流行の病
第3章 精神病院の風景
第4章 精神鑑定のウソ
第5章 カウンセリングと精神分析
第6章 ヒステリーと神経症
第7章 精神療法のワナ
第8章 精神疾患の治療法
第9章 特異な精神症状
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
122
精神医学は医療・医学の中で別枠のように扱われてきた黒歴史がある。現在日本の精神科の病床数は世界で最も多いが、終戦直後には精神科病床が不足していたため、座敷牢が使われていた。昭和30年代以降政府の誘導で私立の精神病院が乱立した。しかし、1990年代頃から精神疾患への注目度が高まり、マイナーな科ではなく、研修医に人気のある科になった。最近の認知行動療法も、心理療法やカウンセリングでさえ確立された方法はまだなく、未だにフロイトの精神分析の呪縛から抜け出せていないのを指摘できるのも、現場を知る精神科医だからこそ。2023/05/16
こばまり
43
柔らかめの医療エッセイといったジャンルか。私には読み易かった。精神科に限らず大学の医局事情は生々しく、同業者や似非学者批判も遠慮がなくて面白い。精神分析とマルクス主義の親和性についてはもっと深掘りしてほしかった。2023/07/16
Katsuto Yoshinaga
7
黒沢清監督の「CURE」という作品は、私が好きな映画のひとつである。精神医学/精神医療やメスマー(メスメル)がモチーフである、この映画について上手く言語化できていなかった。本書に、動物磁気の概念を提唱し、暗示(催眠術)によりヒステリー治療を行っていたメスメルの紹介や、治療者が患者と個人的に親しくなり、治療者も患者の精神現象に取り込まれる“転移”というケースに関することが書かれており、「CURE」に関する理解が深まった気がする。某通販サイトに批判するレビューがあるが、これだけでも、私には値打ちがあった2023/03/08
TOMTOM
3
筆者の言い分としては、PTSDなどの診断基準と異なるのに、濫用されている、カジュアルに使われている。また、司法の場での精神鑑定も、誤っている場合がある、それは裁判日数を減少させるため、また裁判員制度で一般人にわかりやすくするためとのことであるが、統合失調症を発達障害と診断するなど精神鑑定する診断医のレベルの低さを嘆いている。一方で精神病の歴史を丁寧にひも解いており、その歴史を学ぶという意味では分かりやすい書だと感じました。2023/04/09
おやぶたんぐ
3
これまでに読んだ著者の本とは違い、内容が章立てに必ずしもそぐわず、ふわっとした感じ。エッセイに近いか。最近の事情を取り上げている点は参考になる面も。2023/03/16