内容説明
グルリエ、フリーマントル、シャーペンの三家族がカンザスのコー・ヴァレーにやってきたのは、1855年のことだった。それ以来、三つの一族は隣人として生活してきた。ある時は奴隷解放に抗う者たちの襲撃を受け、またある時は疫病や旱魃といった大自然の猛威にさらされながらも、大地とともに、愛憎を紡ぎながら。歳月が過ぎ、フリーマントル家の屋敷は当主を失って無人になった。シャーペン、グルリエの両家は信教をめぐって対立を続ける。そして、激動の現代において、農場を営む人々といえども、世界と無縁ではいられない。親子の断絶、男女平等、イラク戦争、マスコミ、インターネット……フリーマントル屋敷にニューヨークから新しい住人が引っ越してきたことをきっかけに、人びとの生活に巨大な波紋が起きてゆく……。V・I・ウォーショースキー・シリーズの著者が自らの故郷を舞台に、現代社会でのさまざまな問題を折りこみ、大地に生きようとする人々を重厚かつ華麗に描く野心作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zushhy
3
二段組みのわりに読みやすい本であった。過去話がいくつか伏線めいて張り巡らせてあるので、実は…という展開になるのかと期待したんですが、あくまで小さな街で生きる話。隣の家に信心で凝り固まった婆さんがいて、(進歩的な)若い嫁さんや、かわいいティーンエージャーの女の子のあら探しをして、人生を真っ黒にするような噂を広めてまわってたりしたら、やっとられん、とつくづく思いましたよ。これもアメリカ2014/11/24
四男の母
2
初読みの作家だったので、シリーズでないのから読んだ。ある意味ご近所トラブルで、ドロドロしてちょっといろんな人間が怖かったが最後は救いがあり、わりと好きな感じ。分厚い本なのに一気読みだった。2017/11/25
kemonoda
1
大作です!!V.Iの出てこないパレツキーの小説というのは・・・好きですね。とても好きです。「ゴースト・カントリー」はシカゴが舞台でしたが、本書はパレツキーのルーツであるカンザスの田舎が舞台。「宗教」と「主義」というもののもつ「狂信」と「不寛容」の恐るべき本質はある意味、人間の本質であって、悪は滅びないし、なかなか報いも受けないけれど、とても小さくともハッピーエンドであることで救われました。世界を変えることは簡単でなくても、自分自身を変えることは、自分にはできるはずってことですよね。2013/10/09
yutusbochan(yasuhiko.utsubo)
1
V.I.ウォウショウスキーの作風を期待して読み始めたが、全くの別物でした。2010/01/02
sawara50
1
女探偵ヴィグ・ウォーショースキーのシリーズでおなじみ、サラ・パレッキーの普通小説。携帯やEメールも出てくるし、まぎれもなく現代が舞台なのだが、中西部の伝統ある農家の幸せファミリーがふとしたきっかけで近所のトラブルを起こし家庭崩壊していくという話。エピソードにゲイ差別、キリスト原理主義など現代アメリカの病巣が顔を覗かせていて興味深い。アメリカの田舎者は美学・主義主張があるのはわかるが、とても古色蒼然としていて私は暮らせそうにない。(それ以前に人種差別にあいそうだが)。都会のギャングとは違った怖さがある。2009/10/18