内容説明
18世紀を通じて「対位法」はどのように理解されたのか。バッハが「対位法の巨匠」として称揚・顕彰された背景を、同時代の音楽美学を丹念な読解によってあぶり出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
41
対位法の受容史としての博士論文。ハイニヒェン、マッテゾン、マールプルク、キルンベルガーらの著作を丁寧に辿ることにより、対位法の持つ理性的・人為的側面が批判され、感性的・旋律的な音楽観が萌芽する時代に、バッハがなぜ否定されてきたかの歴史がよく分かる。ただ、バッハの対位法は、決してマッテゾンの批判した「音程の数学的な操作」ではなく、18世紀に成立した新旧の音楽観を包摂するものであったからこそ再評価された事実を、もっと掘り下げてほしかった。「バッハと対位法の美学」でなく「バッハの対位法」こそが重要だと思うから。2020/05/16
ひばりん
4
バロック音楽の専門書であり、注目の若手音楽学者による待望の単著である。一般的に言って、西欧音楽史には「音楽=数学=神学」という中世的なミクロコスモス的宇宙観から、個的表現芸術へと世俗化したという大きな物語がある。本書の貢献は、そうした史観を、同時代の「通奏低音理論・対位法論」の言説分析という形で、厳密に実証したところにある。西欧音楽は、〈音楽理論〉に付随していた宗教的宇宙観を自ら払拭して、一つの「表現手段」として徐々に語り直すことで普遍性を獲得したといえよう。西欧音楽史の「要所」を的確に記述した好著だ。2020/04/29
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