内容説明
人生にあるいくつかの大事な分岐点。そして私は今ここにいる。
――8作からなる短篇小説集、待望の文庫化!
ビートルズのLPを抱えて高校の廊下を歩いていた少女。
同じバイト先だった女性から送られてきた歌集の、今も記憶にあるいくつかの短歌。
鄙びた温泉宿で背中を流してくれた、年老いた猿の告白。
スーツを身に纏いネクタイを結んだ姿を鏡で映したときの違和感――。
そこで何が起こり、何が起こらなかったのか? 驚きと謎を秘めた8篇。
「一人称単数」の世界にようこそ。
※この電子書籍は2020年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
92
村上春樹さんの作品は一頃随分読んだ。20代からから30代にかけて。静かな文体に表れる不穏さ。そこが好みだと思う。久しぶりに読む村上春樹さんの短編集。「石のまくらに」、「ウィズ・ザ・ビートルズ」、「品川猿」が好み。刹那的な関係、かつての恋人の死、不思議との邂逅。「石の」での短歌は数編私にも刺さる。村上春樹さんの作品で短歌は珍しくもある。「ウィズ」での昔の恋人とその兄。かつて読んだ「ねじまき鳥クロニクル」を少し想起したが、平穏な兄妹で安心もする。「品川猿」は村上春樹さんらしい不思議さ。長編も再読したくなる。2023/02/18
ケイ
84
一度雑誌で読んだのだが、その時は果たして全部読んでいたかな。その時も感じたのだが、俳句がとてもいい。品川猿の不穏さや不気味さも好き。醜いという事をどういう文脈で書こうが、その言葉を使う人を醜くするなと思う。2025/06/20
クプクプ
84
正に私が今、読みたい内容でした。「東京奇譚集」の「品川猿」の続編が載っていることが目的で手に取りました。「品川猿の告白」というタイトルで、ユーモアは前作ほどではないものの、今作は、旅行の雰囲気が、たっぷりで違う角度で楽しめました。表題作「一人称単数」を短編集の最後に配置したのも効果的でした。一番、面白かったのは「謝肉祭」という短編です。シューマンのピアノの謝肉祭がテーマでした。村上春樹はジャズだけでなく、クラシックにも詳しいことがわかったのが、収穫でした。今後も村上春樹を読んで文化を吸収します。2025/05/05
K
70
短編集。村上春樹を読んだのは学生の頃の『海辺のカフカ』や『ノルウェイの森』以来か。独特な世界観の余韻とともに、久々に浴びる独白めいた語り口に懐かしさを感じた。一部例外を除きそれぞれ振り返ってみると、総じて過去の体験を追想し疑問が残りつつも作品内では折り合いをつけられ、読み手側としては一呼吸置いて心がざわついてしまうような結びが印象に残る。2023/05/05
セシルの夕陽
65
何のジャンルに入るのだろうか。エッセイのような私小説の8話短編集。どこか不思議な話が綴られている…春樹氏にかかれば、全て謎めいた話になるのだけど。ジャズやビートルズ、クラッシックの音楽に絡んだ作品もたくさん。私は疎くて残念ながら『謝肉祭』はシューマン🎵謝肉祭を聴きながら読んだ。『品川猿』は「東京奇譚集」にも出てきた話とリンクしていた。『ウィズ・ザ・ビートルズ』が1番好き♡ 今後も春樹氏の文章リズムに時々触れたい。2024/06/28
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