内容説明
『幽霊になってしまってからは、アイヴォリーのほうが美月よりずっと私らしい気がする。どうしてかわからないけど。もしかしてわたしは、美月という貝殻に間違って閉じ込められたアイヴォリー、だったのかもしれない。』 墓場に住む、幽霊になったばかりの女の子「アイヴォリー」は、ある日少年と出会います。
生きている人間に自分の姿は見えないはずなのに…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
60
やっぱり竹下文子さん、好きだなあ。切なく、優しい物語。幽霊になってしまった少女アイヴォリー。幽霊として淡々と日々を過ごす彼女ですが、それでも時々、生きている頃の記憶と、いずれ消えていく自分の姿を想像してしまう。不安と焦燥に動揺してしまうアイヴォリー。そんなある日、彼女の姿が視える少年と出会います……。繊細に描かれる少女の想いがひしひしと伝わってきます。終盤のドラマティックな展開に引き込まれました。2023/07/12
七月せら
16
幽霊らしくない幽霊のアイヴォリーは、幽霊であることを除けばごく普通の女の子。誰かとお話したい気持ちになったり、自然の音に耳を傾けたり、漠然と不安な気持ちになったり、恋をしたり。お墓ってこんなに素敵な場所だったかしらと思うほど、ふわふわと温かい毎日。アイヴォリーホワイトの魔法にかけられたみたい。管理人さんや他の幽霊さん達とアイヴォリーとの会話も、優しい言葉や気持ちに溢れていて心地良い。「雨のひとつぶひとつぶは、みんな透きとおる音符でできているのかもしれない」という表現がとても素敵です。2016/07/20
まきこ.M
16
幽霊や墓地という、一見怖いイメージ設定にみえて、とてもゆるやかな、陽だまりのような雰囲気。竹下さんの柔らかい感性を感じた。こんなまったりした幽霊のアイヴオリーとお話ししてみたいなあと思う。そうかあ。幽霊が眠るのは、なんとなくそうしてみたいときなんだ。柔らかい暗闇の繭にすっぽりつつまれてしまう気持ちってなんだかわくわくする。光介君とのあわい恋の欠片のやりとりが少しきゅーとくるこシーンもあり。二人が自転車で墓地の門を駆け抜けるラストでは、想像の翼をはばたかせてあれやこれやと考えた。静かで優しいお話。2014/10/12
なないろ
14
小学生の時に読んで、ホワイトというイメージが残った読み応えのある1冊。 再読して、こんなに短いお話だったんだーと驚きです。温かい光がさしこんでるイメージのほんわかなお話。小学生ながらにこの温かさに惹かれて好きだったのかな。 死後の世界がどういうものかは分からない。だけど、想像のなかでは未来希望がある温かいもの。泣きたくなるほどキレイであってほしい。2014/05/20
sakko/さよ
7
初めて読んだのはいつだったのかな。十何年ぶり。ラストがかなり印象に残っていたんだけど、また同じような気持ちになった。悲しいような、嬉しいような。なんと言ってよいか分からないけど、忘れられない。14歳の女の子の瑞々しい感性がそのまま文章になっているみたいで、竹下文子さんやっぱいいなぁと思った。原本は1994年理論社刊。2012/12/19