角川書店単行本<br> 海は地下室に眠る

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角川書店単行本
海は地下室に眠る

  • 著者名:清水裕貴【著者】
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • KADOKAWA(2023/01発売)
  • ポイント 18pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784041125267

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内容説明

稲毛海岸近くの古い洋館・伝兵衛邸の地下から、正体不明の絵画が発見された。ドレスを翻し踊る女を描いたその絵は、過去にこの地域で流行っていた“赤いドレスの女”の怪談を思い出させるという。
学芸員のひかりは、絵について調べようとしていたところに映像作家の黒砂からある資料を預かる。千葉一の花街として栄えた蓮池にまつわるインタビューを集めたその資料では、ひかりの祖母が”流転の王妃”として知られる嵯峨浩との戦前戦中期の交流について語っていた。
地下室の絵画と祖母の過去、そして“赤いドレスの女”の怪談。欠片をひとつずつ紐解くと、運命に翻弄された女たちの秘められた過去が明らかになる――。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

とん大西

112
学芸員ひかりが目にした赤いドレスの女の絵。誰の手によるものか誰を描いたものなのか。千葉の海辺に漂うセピア。由緒ある邸宅の地下室で眠り続けた絵画のエピソード。静かな探求のうちに垣間見えてきた戦前戦後の混乱と悲哀。記憶もおぼろげな亡き祖母の時を超えたモノローグ、それは秘匿すべきメッセージだったか。真実も真相も眠り続けて幾星霜。往時の人々のやるせない想いが静かに呼吸していた。2023/04/16

yukision

65
古い洋館の地下室で発見された謎の油絵の素性を美術館学芸員が調査し,意外な事実に行きつく。実在の芸術作品や現存する歴史的建造物,そして歴史上実在した人物を織り交ぜながら語られる物語はフィクションと知りつつも思わず引き込まれる。千葉の稲毛海岸あたりに縁のある方は猶更楽しめそう。2023/10/04

のり

62
千葉美術館で学芸員として働く「松本ひかり」。美術館の所蔵作品と若手芸術家のコラボ企画が持ち上がり、慌ただしくなる中、明治の実業家の別荘の地下室に眠っていた絵と出会う。作家・経緯も不明の絵に魅せられた「ひかり」は背景を辿ろうとするが、予想外のところに転がっていく。戦禍を免れ多くの謎を秘めた作品。込められた想いと共に静かに眠って欲しい。2023/11/02

どぶねずみ

44
稲毛図書館で「稲毛を'舞台にした本です」と紹介されていた。景観は稲毛そのままだが、戦時中の浅間神社の鳥居は海面に浮かぶ。戦前は別荘地として人気の場所で、ラストエンペラー溥儀の実弟の家が今でも残る。1枚の絵をきっかけに当時の秘密、戦争によって歯車が狂い出した真相を追っていくところは迫力には欠けるもののここでもまた戦争について考える機会になった。戦争によって人生を狂わせない人なんて誰もいない。2023/08/22

カノコ

32
古い洋館の地下で見つかった、正体不明の一枚の絵画。その出自を調べる過程で、学芸員のひかりは祖母の過去を知ることになる。戦前戦中期と現代の話が交互に語られる。厳格に写実的な描写を貫いているのにどこか幻想的に感じるのは、過去から現在を繋ぐ亡霊の影を見るからだろう。何かを伝えたいと絵を描いた人がいて、それを残したいと祈った人がいる。その思いが繋いだ、優しく密やかな記憶のことだ。芸術に心を捧げる人たちと、それを妨げる困難の悲劇的な対比も鮮やか。思いが結実するラストでは、自分の中にも存在する遠い海の映像が浮かんだ。2023/05/21

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