内容説明
19世紀半ばのアメリカ。14歳で家出した少年は、放浪の末にインディアン討伐隊に加わった。異形の大男ホールデン判事とともに、一行は荒野をわたり、暴虐の限りをつくす旅をつづけるが。美しく情け容赦のない世界と、そこで生きる人々の生と死を冷徹な筆致で描き上げたマッカーシー初期の代表作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
107
「とんでもない」作品である。銃という一方的な武器で弱者であるインディアンを無造作に殺し頭皮を剝ぐ。メキシコ人も、場合によりアメリカ人であっても。実在の「グラントン団」とその一味がベースというが、やりたい放題の悪事を働く彼らは「正義と博愛のアメリカ」という西部劇映画が全くの虚構だという「修正西部劇(Revivionist Western)」の代表作らしい。全編血まみれのこの作品に救いはあるのか、おそらく作者は事実を淡々と突きつけるだけで「あとは自分で考えろ」と読者を突き放しているのだろう。G1000。2023/05/05
里愛乍
75
どこまでも続く乾いた景色と残虐のロード。人はこの残酷極まりない行為にすら正当性をおのれに見出す。終盤に語る判事の言葉がひとつひとつ伸し掛かる。血こそが人間同士の絆を固めると彼は言う。確かに争いは無くならない。今も。人間が集団でしか生きられない限り、戦争はなくならない。ならばその世界で如何に生きるか。巻末にある書評家の解説も同意が多くて面白かった。黒原氏の訳文が相変わらずカッコよくて好き。2024/04/14
NAO
72
一つ所にとどまることができず放浪し続ける少年は、『すべての美しい馬』のジョン・グレィディ・コールと似ている。少年は、熱い血をたぎらせ、新しい場所を求めて国境を越えメキシコに向かったが、ジョン・グレィディが馬に向けたような情熱はこの少年にはないように思う。少年は焦燥感に身を焦がしたままあてもなくさまよっているのか、ただただ血に飢えていたのか。戦うことこそが彼の目的なのか。殺伐とした戦いのシーンを描きながら、作家は、どうやら、それを否定しているわけではないようにみえ⇒2018/12/02
えりか
54
文庫化に伴い再読。熱い、渇く、血が吹き出し、身体中が砂に覆われる。残酷な世界でありながら、彼の描写する世界は美しすぎて、余計に苦しくなる。巨漢で毛が一本も生えてないツルツルの判事が全裸で踊り狂う。戦争は遊戯であり、なくなることはないという判事。判事が世界であり、判事だけが世界そのものをジャッジしているのか。美しい情景描写とそこに存在する人間の動きだけで、感情をほとんど描写していないにも関わらず、気持ちの揺らぎが伝わってくるのだから、ため息しかでない。マッカーシーは素晴らしいと思う。2018/09/09
ヘラジカ
53
再読。2014年の年間マイベスト。ここまで言葉に打ちのめされる本には数えるほどしか出会ったことがない。紛れもなく現代文学最高峰の大傑作。途方もない深遠。人間が言葉によって成し遂げた究極の偉業ではないかと思う。2018/08/22
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