ハヤカワepi文庫<br> 越境

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ハヤカワepi文庫
越境

  • ISBN:9784151200564

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内容説明

16歳のビリーは、家族の家畜を襲っていた牝狼を罠で捕らえた。いまや近隣で狼は珍しく、メキシコから越境してきたに違いない。ビリーは傷ついた牝狼の姿を見るうちに、故郷の山に帰してやりたいとの強い衝動を感じる。父の指示には反して、彼は家族には何も告げずに、牝狼を連れ国境を不法に越えた。その長い旅路の果てに底なしの哀しみが待ちうけているとは知らず――孤高の巨匠が描き上げる、美しく、残酷な青春小説

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

411
ニューメキシコの辺境に生まれ育ったビリー。彼は16歳から20歳にかけて3度メキシコとの国境を越える。一度は狼と、次には弟と、そして最後は一人で。メキシコはさらに荒涼とした地ではあるが、風土や言語の上からの隔たりはそれほど大きくはない。いずれの時にもビリーはいとも簡単に越境してゆくし、彼も弟のボイドもスペイン語に不自由してはいない。しかし、越えた先はやはり異境だ。意志の疎通がなされる時もあれば、全く通じることなく暴力的な解決がはかられることもある。読者の目にはビリーは圧倒的なまでに孤独な存在に映る。⇒2020/12/20

市太郎

56
部分的に読み返しただけだが、今月読んだ本があまりに少ないのでここらで登録。何度も繰り返し読みたくなる本ってあまり無かったのだが読メを始めてからはありすぎて困っている。そんな中でこれは読メを始める前から時々読み返したくなる本。確かに作者の言葉は少し色あせてきたような気がしないでもないのですがそれでも心にズドンとくる感覚は今でも同じ。哲学的で何度読んでも意味がわからなかったり、やけに言い回しがまどろっこしかったりもするのですが、僕はその文章が大好きです。良かったら皆さんの「繰り返し本」も教えてください(笑)2014/10/27

えりか

51
あぁ、やっぱりマッカーシーが好き。この辛い話の中に輝くかっこよさがある。廃墟と化した教会で孤独に生きる男も、盲目の男も、そしビリーも、全ての者が愛や光や世界など、大切なものを失いながらも、懸命に生きている。哀しみを受け入れて生きている。生かされている。哀しみを経験して、自分と世界を見つめている。自分と世界の在り方を見つめている。ニーニュがやられた時は、どうかもうこれ以上ビリーから何も奪わないでと願わずにいられなかったし、ラストはビリーの男泣きと一緒に涙を流してしまった。ずしんと胸に重たく響く物語だ。2018/07/02

ヘラジカ

50
最新作の刊行に備えて、代表作をどれか読み直そうと思い手に取った。初読時には心に余裕がなかったのもあって感想も書けず、あまり味わえなかったこちらの作品を再読。数多の試練が待ち受ける過酷な通過儀礼の旅。暴力に支配された厳しくも美しい荒野、老人たちが語る冷徹で無慈悲な逸話、そこに少年たちの童心と純真が絶妙に混ざり合って、荘厳な神話世界を作り上げている。『ブラッド・メリディアン』の陰に隠れてしまっているが、この作品も相当な傑作だ。現代アメリカ文学必読の一冊である。2023/01/16

syota

43
大変なものを読んでしまったという思いと、ちょっと待てよという躊躇とで感想がまとまらない。作者はドストエフスキーとメルヴィルを高く評価しているそうだ。確かにこの作品の構造は『白鯨』を受け継いでいるし、挿入される寓話は『カラ兄』の”大審問官”を想起させる。少年が、法律や建前、良識といったベールを剥ぎ取ったこの世界の真の姿を知り、その代償として大切なものを次々と失っていく壮大な物語だ。しかし、これが『白鯨』や『カラ兄』に比肩するかというと、うーん、と迷ってしまう。傑作なのは間違いないのだが…→2025/01/13

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