内容説明
「ウイルス」という言葉を知らない人はいないだろう。ただし、その定義は曖昧である。目に見えない極小の存在で、ほかの生物の細胞内でしか増殖できないために、通常は生命体とはみなされない。だが、独自のゲノムを有し、突然変異を繰り返す中で、より環境に適した複製子を生成するメカニズムは、生物の進化と瓜二つだ。恐ろしい病原体か、あらゆる生命の源か――。最先端の進化生物学の知見から、その正体に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
75
人間は古くからウイルスと共生してきた。ありとあらゆる動物がウイルスの宿主であり、やはり共に生きてきた歴史もある。ウイルスにとっては共生できる動物、あるいは昆虫たちより、亡くなってしまう可能性のある人間のほうがイレギュラーな存在なのかもしれない。読んでいて思ったのは、これからもパンデミックは起こり、おそらく避けられないのだろうということ。せめて今回のパンデミックでウイルスの研究が進んでほしいと感じた。2023/03/14
nagoyan
14
優。ウイルスは、生物の進化と深い関りがある可能性がある。宿主とともに進化してきた共進化。宿主の進化自体の原因となった可能性も。ウイルスの宿主としてコウモリが選ばれるのは、大きな集団を作って生活、声を出し続ける、夜間生活するので鳥類より天敵に捕食されにくい、鳥類と同様に飛行するので活動範囲が広い等の生活形態がウイルスに有利に働くからというのも面白い。ウイルスは蔓延すると病原性が低いものが残る。ウイルスの進化スピードは速い。そして、われわれは実はウイルスまみれ。2023/01/31
Iwata Kentaro
11
前から読みたかった本。期待に違わず面白かった。ウイルスの進化、ウイルスの起源は我々の専門外なので学ぶところも多かった。ウイルス学と感染症学は被るけど別の学問なのだ。だから信頼できるウイルス学者は絶対にぼくらの仕事に口を出してこない。出してくるのは半ちくな学者だけだ。もちろん、ぼくらもガチのウイルス学領域に口を出したりはしない。 「ウイルスは生物か」の命題への見解も著者とぼくは同じ考え。2023/03/03
(k・o・n)b
10
ウイルスは自らタンパク質を生産できず、増殖には寄生が必須となるため非生物とされる。だが、決して変化の無い存在という訳ではなく、ウイルス自身もDNAやRNAを持ち、その分析から幅広い生物と相互に影響しながら進化してきた様が伺えるようだ。例えば、レトロウイルスがその増殖の過程で我々の祖先のゲノムに書き込んだ情報は、偶然胎盤の形成に利用されているらしい。この手のミクロな生物学(と言っていいのか?)には疎かったのでなかなか難易度が高かったが、その面白さの一端は感じられた気がする。2023/03/05
kamekichi29
8
ウィルスについて。現在の生物としての枠組みには入らないけど、RNAやDNAを使って増殖しているもの全般ってことになるんだろうか。 COVIDやSARSなど元々コウモリ由来のウィルスが多いらしい。コウモリが飛んでいる際に、飛沫を飛ばしまくっているということに驚いた。2024/03/01