岩波新書<br> ルポ アメリカの核戦力 - 「核なき世界」はなぜ実現しないのか

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岩波新書
ルポ アメリカの核戦力 - 「核なき世界」はなぜ実現しないのか

  • 著者名:渡辺丘
  • 価格 ¥924(本体¥840)
  • 岩波書店(2023/01発売)
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  • ISBN:9784004319528

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内容説明

冷戦終結後も核抑止の論理にこだわり続けるのはなぜか.核兵器はどのように「運用」され,どんな課題を抱えているのかーー.長く秘密のベールに包まれてきた核戦力の最前線を訪ね,歴代政府高官や軍関係者など多数のキーマンへの単独インタビューを交えて,「核兵器の近代化」を進める世界最強の核超大国の今を報告する.

目次

はじめに
略語一覧
アメリカの核戦力「三本柱」の拠点と関連施設
第1章 そのときを待つICBM 核戦力の三本柱 その1 
農村地帯の地下に六〇年、息を潜める核ミサイル/核ミサイル発射の手順/ミサイラーの素顔/ICBM部隊の指揮官に問う「抑止」/老朽化するICBM/兵器更新の特需、地元期待/例外的なICBM反対派住民
第2章 戦略爆撃機、世界が照準 核戦力の三本柱 その2 
異例の長寿機B52/B52の機内に入った/「テロとの戦い」から核の「大国間競争」へ/「ブロークン・アロー」 核兵器重大事故の歴史/B52の近代化計画、一〇〇年依存か
第3章 核戦略の主力になった潜水艦 核戦力の三本柱 その3 
海上で即応態勢/低出力核の開発、実戦配備/同盟国・日本に見せた戦略原潜の内部/原潜の元艦長が語る「核抑止」への疑問/「真っ先に狙われる」基地周辺住民の懸念と、無関心の現実
第4章 「核兵器近代化計画」の誕生 オバマ政権 
「核兵器のない世界」/条約批准と引き換えに核兵器の近代化約束/核抑止と核軍縮の両立/「日米拡大抑止協議」開始、変わる同盟/核能力維持のコスト/アジアにシフトするアメリカの核戦略/核の「先行不使用」宣言断念/現職のアメリカ大統領として初の広島訪問
第5章 「使えない核兵器」から「使える核兵器」へ トランプ政権 
ICBM発射実験に立ちあう/発射実験の全体計画/発射実験の報道公開の狙い/「核兵器なき世界」の方針を転換/INF条約から離脱/「世界最強の核戦力」/新STARTが存続の危機に/バイデン政権への「注文」
第6章 不透明な核政策の行方 バイデン政権 
直面する二つの課題/オバマ路線の継承/ペリー元国防長官「核禁条約を支持する」/モニツ元エネルギー長官、核禁条約議論不参加は「間違い」/バイデン政権高官に直接問う/核兵器近代化のコストと利権/ウクライナ侵攻と核戦争のリスク/日米「拡大抑止」の強化/NPT会議再決裂、見えぬ日本の役割/バイデン政権の「核態勢見直し」発表
第7章 アメリカのヒバクシャたち ハンフォード「死の一マイル」を訪ねて 
アメリカの核戦力の原点/暴かれた放射能放出問題/ヒバクの記憶を継承する/隣町では核兵器に親近感も/疎外された核大国のヒバクシャ/「核兵器を持たなければ、自分たちが被害に遭う」/全米市長会議の挑戦 変化は自治体から/アメリカの市民社会にも変化の兆し
おわりに
核をめぐる世界の動き関連年表

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

63
ジャーナリストがアメリカの核戦力の現場を取材したり、政府高官などのインタビューにより、その現状をレポートしたもの。強固な核抑止論に裏付けされた「三本柱」(即応性のあるICBM、柔軟性の高いB52,秘匿性の高い原潜)の維持と近代化、そして「核なき世界」の困難さを感じた。本書の白眉はハンフォードを紹介したことか。日本でもあまり知られていない核兵器用プルトニウム製造工場(1987に閉鎖)が、ひどい放射能汚染と被曝者を出してきた恐ろしい現実が語られている(個人的には反原発のスライドで40ほど年前に知ったが)。2022/12/27

榊原 香織

60
怖い怖い、ホラーより怖い あまりの核兵器の多さに読んでて暗くなります。ヒューマンエラーどうすんだ、ブロークンアロー(重大事故の暗号)は? オバマ宣言はどこ行った2023/04/14

coolflat

16
27頁。ICBMが配備されている地元の州選出の連邦議員らは超党派で「ICBM連合」を結成してICBMを一発も減らさずに近代化を進めるように圧力をかけている。ICBM連合の上院議員8人は2007~18年に軍事企業から総額130万ドル超の献金を得ていた。このうち、ICBMを請け負うボーイングが16万ドル超、ノースロップ・グラマンが14万ドル超に上った。核爆撃機や核搭載の潜水艦が拠点を置く州の議員にも同様の利害関係がある。核大国アメリカの抑止力は軍産複合体と地元の有力政治家に支えられ、互いに利益をもたらしている2023/12/01

kk

14
図書館本。安全保障問題に造詣の深い朝日新聞記者がワシントン駐在中の取材を基に描き出す、アメリカの核兵器をめぐる今日的状況。戦略論的な内容というよりも、さまざまな「核の現場」を訪ね歩いた経験と所感を伝える、文字通りのルポ。それだけに、理論的な書き物にはない迫力と臨場感を感じます。基本的には「リベラル」的なスタンスのように見受けられますが、「何故アメリカは核を手放せないか」という大きな問への向き合い方には、大国間関係のリアリティや問題の深さに対する著者の真摯さと鋭い洞察を感じました。2023/10/14

そうたそ

11
★★★☆☆ アメリカが核大国であるのは言うまでもないが、意外とその実態は知らなかったりする。本書はそんなアメリカの核の実態に、政府高官や軍関係者への取材も交えながら迫る一作。アメリカの核戦力の三本柱、そして、オバマからトランプ、バイデンに至るまでの核に関する政策の変遷などが分かりやすくコンパクトにまとめられており、非常に分かりやすかった。世界規模で核問題を捉えるには足りないかもしれないが、アメリカという国の核問題を知るには最適な一冊だろう。2023/02/20

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