内容説明
『悪魔の辞典』のビアス(1842-1914)はまた,芥川龍之介が「短編小説を組み立てさせれば彼ほど鋭い技巧家は少ない」と評した短篇小説の名手である.北軍の義勇兵として南北戦争の激戦地を転戦したビアスは,そこで人間の生死をつぶさに眺め,人間をみつめ,社会を知った.短篇集『いのちの半ばに』他から秀作15篇を収録.
目次
Ⅰ
月明かりの道
板張りの窓
死骸の見張り番
環境が肝心
男と蛇
Ⅱ
アウル・クリーク鉄橋での出来事
チカモーガの戦場で
宙を飛ぶ騎馬兵
哲学者パーカー・アダソン
行方不明者のひとり
とどめのひと突き
Ⅲ
ぼくの快心の殺人
猫の船荷
不完全燃焼
犬油
底なしの墓
解説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
61
どれもこれも死が密接に絡みついてくるような話ばかり。全体が三部に分けられており、それぞれ死と恐怖、戦争と死、黒い笑いみたいになっている。ただ皮肉と嘲笑が全体に通底している。第一部の「月明かりの道」は芥川が影響を受けたと聞いて興味深く読んだが、それ以外の短編も死や死体がテーマで薄気味悪さ十分。第二部の戦争はとことん皮肉。某後味の悪い映画を思わせる「とどめのひと突き」や有名すぎる「アウル・クリーク~」陰惨さだと群を抜く「チカモーガ~」と粒よりが揃っていてここが一番好きかな。第三部もホラを十分楽しめたと思うし。2018/09/16
Vakira
48
ビアス初読み。龍ちゃんの「藪の中」、最近読んでMy琴線ビ~ンと。読友さんから龍ちゃんの発想はビアスの作品との情報いただき読んでみた。数ページの短編集。ホラー、南北戦争、日常的犯罪の3部構成。殆どどこかに死体や殺人の話が表現される。すぐに物語に引き込ます語り技上手い。特に戦争の話は映画「1917」を見ている様で4~5ページの短編なのにドキワクの緊張感。「藪の中」の発想モデルありました「月明かりの道」。殺人事件における3人の証言。その内一人は死人で霊媒師によって語られる。2020/05/22
散文の詞
41
それぞれに味わい深い15の短編集です。 大雑把に3つのグループに別れています。 それぞれ、狂気と死が人間にとっていかに身近なものか、そんな極限の場面を切り取って描き出した話。 また、戦争従軍の経験が紡ぎ出したような、人間が死に直面しているその間の話。 それから、現実にはありえない、おぞましいような話。 それぞれ趣は異なりますが、いずれも奇怪な話ばかりで、楽しめます。 2019/11/17
藤月はな(灯れ松明の火)
26
些細なことや戦争などによって起こる死をシニカルに描いた作品。人によっては好き嫌いは別れそうですが私は好きです。1は誤解からひき起こった死を描いています。「月明かりの道」は芥川竜之介がこの話を参考に「藪の中」を書いたのかなと思いました。2は戦争の不条理さや皮肉すぎる死が描かれています。3は追剥や堕胎など、人から見ればろくでもない職業に就く親に育てられた子供が引き起こす邪気と無邪気の混同した犯罪を描いています。嫌に現実味溢れる描写が癖になりそうです。2011/09/27
ホンダ
23
芥川龍之介も絶賛した短編の名手、ビアスの厳選短編集。「籔の中」の元となった「月明かりの道」や名作「アウル・クリーク鉄橋での出来事」も収録されている。「ホラー」「南北戦争」「奇譚集」がテーマの三部からなる全16話の本作、大抵人が殺され、シニカルかつ悲劇的なオチで話が終わる。お気に入りは「ぼくの快心の殺人」。元犯罪稼業の一家に生まれた主人公が、たまたま親戚の強盗事件の被害者になり、奪われた物を返してもらえないので親戚を拷問して殺す話だが、ピカレスクというよりは只々笑える感じ。登場人物がみんな狂っている。2020/01/23
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