「死にたい」とつぶやく - 座間9人殺害事件と親密圏の社会学

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「死にたい」とつぶやく - 座間9人殺害事件と親密圏の社会学

  • 著者名:中森弘樹【著】
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 慶應義塾大学出版会(2023/01発売)
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  • ポイント 540pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784766428186

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内容説明

事件はなぜ起きたのか
「死にたい」とつぶやいた者たちは、本当に死を望んでいたのか。
なぜ、家族ではなく、その外部に救いを求めたのか。
SNSに溢れかえる「死にたい」の声に、私たちはどう向き合うべきか。
『失踪の社会学』で颯爽とデビューした俊英による快著。


本書は座間9人殺害事件を扱うが、事件の内容を詳細に記述したルポルタージュではない。したがって、既存の報道でまったく明らかになっていない情報は本書には含まれていない。また本書は、事件の一部始終を一つの物語としてまとめたノンフィクションでもない。
もちろん、座間9人殺害事件がどのような出来事であったのかを整理はするが、
あくまでも主目的は、事件について社会学的に考えることである。
したがって、何かしらの「真相」を「暴く」ような内容が描かれることは一切ない。

本書が、座間9人殺害事件について描くのは、「死にたい」という言葉が一種のメディアとして機能した事件だという点である。
被害者9人のうち、8人がTwitter上で「死にたい」とつぶやき、それが契機となって犯人と被害者のコミュニケーションが可能になってしまった点、希死念慮を抱えた者たちの救済願望を悪用し、最悪のかたちで示してしまった凄惨な出来事が本事件の特徴として指摘される。

その意味では類似の事件は今後も起こりうるし、SNSに何らかの規制をかけても、防ぎようがない。そこで著者は、さらに深く事件の本質について考える必要性を説く。
「死にたい」とつぶやく者たちはなぜ、家族などの親密圏ではなく、その外部に救いを求めたのか、という点である。
SNSに溢れかえる「死にたい」の声に、私たちはどう向き合うべきか。
そして、「死にたい」とつぶやくものたちと共にいることは、いかにして可能か。


『失踪の社会学』で颯爽とデビューした俊英による快著。

目次

序 論 ある二人の対話から

第1章 座間九人殺害事件を考える
1 事件への問い
2 研究の方法と倫理的配慮
3 事件の肖像
4 「私がしたことは殺人です」
5 「死にたい」という言動と親密圏をめぐる省察
6 救済の悪用

第2章 Twitterの「死にたい」を考える
1 「死にたい」の海へ
2 「死にたい」とインターネット
3 この章で行うことーーテキストマイニング
4 「死にたい」はTwitterでどのように語られているのか
5 「死にたい」とつぶやくユーザーのプロフィール分析
6 私だけのアジール

第3章 「死にたい」をシェアする暮らしを考える
1 シェアハウスの可能性
2 シェアハウスをぶらぶらする
3 互いの生/生命に配慮しあう死にたがりたちーーシェアハウスAについて
4 人が死なないシェアハウスーーシェアハウスBについて
5 一時的な居場所、擬制的家族

終 章 親密圏のなかで「死にたい」を〈リテラル〉に捉える


   註
   あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

恋愛爆弾

21
座間9人殺害事件の犯人である白石隆浩の法廷での「会ってみると本当に死にたいと思っている人はいなかった」という、白石自身にとって不利にさえなる供述を、白石の他人を「裏切る」ことによる主体性の確保という特徴から分析し、Twitterにおける「死にたい」というつぶやきが、それを言ってもそこにいていいとされるような場所を求める、より多義的な「ただの言葉」であることを導き出すという考察は、現代においてそのような場所の実現可能性を探る上で非常に面白かったが、後半は具体的に何を言いたいのかほとんどわからなかった。2023/03/04

buuupuuu

20
居場所というものについて明確な考えを持っていなかったので、教えられることが多かった。まず思い浮かぶのは親密圏で、これは互いの生/生命への配慮に基づく関わり合いである。また承認というものもある。これは自分の価値が認められていることである。さらには、ただ共に居るだけという関係性もある。これは東畑開人が「ケア」と呼ぶものである。著者は、個人間の純粋な関係性である「親密性」や、目的を共有する「共同性」が、親密圏から区別できるとしている。つまり、個人の生や生命に配慮しない親密性や共同性がありうるということである。2025/04/15

kuukazoo

16
『失踪の社会学』が良く、昔blogで「死にたい」を頻発していた知人にどう対すべきかわからぬまま会えなくなったというのもあり読む。が、本書執筆の発端である座間の事件の凄惨さにウッとなり、1冊通して「死にたい」が頻出し辛かった。家族など生/生命への配慮を前提とした親密圏は「死にたい」という言動と折り合いが悪く、その外側(主にSNS)にコミュニケーションの可能性を求めた最悪の結果が座間の事件だった。「死にたい」をliteral(文字通り)に捉え解釈やジャッジしないという対処が示されてはいるが有効かはわからない。2025/03/11

perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇵🇸🇾🇪🇱🇧🇨🇺

11
2022年12月刊。著者は人間・環境学博士。ノンフィクションではなく社会学的な考察。 よりにもよってわが市で起きてしまった惨劇。その事件の概要、その前に本書での倫理的態度の断り書き。しかしこの制約が本書の物足りなさにつながっている気がしてしまった。 白石についての考察。Twitterで死にたい人を誘い込み、徹底的に話を聞く、そして最後に裏切って殺す。しかし本人は死体を切断してクーラーボックスに入れながら生活し、逮捕後の証言も軽薄と言う、重大性を感じさせない。また犯行の動機は金銭と、二人目以降は性欲も。→2023/10/18

なべさん

8
座間の事件を取り上げて、Twitterで死にたいとつぶやく人を社会学の視点でみる。家族、シェアハウスなど色々な観点から分析している。最後の方は少し難しかった。死にたいという人をどのように接すれば良いのかを考えるきっかけになった。何より、死にたいと考えがよぎることがあるので、そういう思考どう付き合うかを考えるために借りたけど、なかなか自分で上手く整理ができなかったり。2023/03/25

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