内容説明
30年以上にわたり樹木たちのコミュニケーションを可能にする「菌根ネットワーク」を研究してきた森林生態学者が明かす! 木々をつなぐハブとなり、次世代を育む「マザーツリー」の驚くべき機能とは? 気候変動が注目されるいま、自然のなかの「秘められた知性」に耳を傾ける一冊!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
125
今年のベスト本になるかも。リチャード・パワーズ「オーバーストーリー」を彷彿とさせる。ブリティッシュコロンビア州のマザーツリー・ウエスタンレッドシダーの窪みに抱かれた著者の姿が象徴するかのように、森林と共に生きてきた人生。木々が菌根菌によって地下でネットワークを通じてつながり合っていることを証明した。それはまるでインターネットのようでも、脳のニューラル・ネットワークのようでもある。生態系というのは人間社会のように関係性で出来ている。TEDトークhttps://digitalcast.jp/v/25221/2023/03/09
藤月はな(灯れ松明の火)
66
森の樹々は菌類を通じて会話を交わし、時には協力し、次世代やそこに棲まう動物たちを育む。それは人為的な植林では生まれない。人の手を入れずに苔や茸などの菌類が土壌を育み、樹が育っていき、海などにもその恵みを齎す環境。自然が生み出した完璧なネットワークこそ、永続的な環境なのだ。その事実を長年の実地研究から見出した著書は、同時に作者の人間関係や人生観も綾となって織り成す。まさに森のような著書だ。同時に「森の少女」と揶揄され、男性が多い林業者に反発された事は歯痒かったし、弟と喧嘩別れになってしまった事は胸が痛む。2023/05/17
がらくたどん
63
20C末に植物が主に根を介して複雑な共生ネットワークを作っているらしいという着想とそれを人間社会のコミュニケーションや知性になぞらえて理解する発想が先進国と言われる西洋哲学圏の自然科学界隈を駆け巡ったのを記憶している。本書は森林ネットワーク研究の草分け的研究者の自伝。去年から読み始め先日ようやく読み終えてふと見渡せば、今年になって伊坂幸太郎・荻原浩・鈴木光司という大人気作家の皆さんがこぞって植物を中心としたネイチャー・ネットワークによる人間社会への警鐘をテーマにした作品を上梓しており妙に納得してしまった♪2025/06/12
たまきら
44
ミミズコンポストを2年弱観察しながら多くのことを学んでいる。もちろん著者のフィールドワークとは違い、私の出した生ごみを処理するシマミミズと彼らを取り巻く生物は箱の中での暮らしだ。けれども基本的なことは変わらないし、知れば知るほど土は腸内空間とよく似ていると思ったことが森林生態学者の言葉でより明確に表現された、という感じだ。土はすごい。そして森という「複雑で適応性のある一つのシステム」もすごい。この複雑系をもっとパターンとして理解し、他の分野に活かしたい。2023/06/27
道楽モン
35
なんという面白さ。一般読者の知的好奇心を満足させるのみならず、多くの学問の徒に研究者としての指針と学問を追求する歓びを与える重用な本だと思う。単なる学問的発見報告書ではなく、著者の家族史や研究を取り巻く環境の変化(主に現場からの抵抗)が時系列で丹念に綴られているからこそ、一般読者にも説得力を持つのだろう。彼女の学問的な偉業は読めば分かるし、先住民族や他の文化が持っているア二ミズム的な自然観を科学的に証明し、経済原理優先の森林開発に根本的な転換を促したという事実は、調子に乗った人類への警句なのだろう。必読!2023/07/09
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