内容説明
大陸横断鉄道完成間近のアメリカ西部。妻エイダを奪われ、不当な罪を着せられた中国系の殺し屋ミン・スーは、予知能力を持つ老人の言葉に導かれ、奇術ショーの一座と共に西を目指して疾駆する。妻を取り戻すため、自分を陥れた連中に復讐を果たすための苛酷な旅路。終着地カリフォルニアで彼を待ち受ける未来は、救いか、それとも――。アンドリュー・カーネギー・メダル受賞、若き天才作家トム・リン25歳の衝撃的デビュー作は、暴力と幻想に彩られた叙事詩的ウエスタ――「境界を越えた者よ、存分にやれ!」
目次
地図
主な登場人物
ミン・スーが犯した幾千もの罪
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
43
これもまた”古い革袋に新しい葡萄酒”を入れた作品と言えるだろう。特筆すべきはただ新しいだけでなくスパイスもふんだんに混ぜ込んである点だ。ハードボイルド西部劇を期待している人からは賛否あるかもしれないが、この作品を印象深いものにしているのは間違いない。ただし、ジョナサン・レセム(謝辞から作者と親交があると思われる)の言葉などから過度な期待をするのは禁物である。読んでいて拙いと感じる部分もあり、お世辞にも人物造形には深みがあるとは言えない。作者の年齢を考えて野心的なデビュー作として読むのが正解だと思う。2022/11/20
おうつき
17
作品世界にどっぷりとのめり込んで1日で読み終えてしまった。西部開拓時代が舞台で、妻と引き離された中国系の殺し屋が復讐の旅に出る物語。古き良き時代の西部劇の雰囲気があるが、主人公と行動を共にする異能を持った奇術ショーの一座の存在が異色。後半の物悲しく切ない雰囲気がたまらなかった。解説を読んで、確かにコーエン兄弟の映画っぽいなと思った。これは是非映像でも観てみたい。2023/06/18
harutamano
13
オールナイトで西部劇3本見て目はシパシパ頭はグラグラ足元グニャグニャな気分。 西部劇で復讐譚、行き着く先はお約束。そんな思いも痩せた馬の背に揺られるうちぐらぐらに。章を追うごと過酷になる道行のさき光か闇かわからず最後まで。まぶしい扉あけて劇場出て歩く夜明けの街は自分が元いた世界なのか。残してきた闇を背負いながら帰る。2022/12/06
ノベツ
11
西部劇でファンタジーでロードムービー。意外な組み合わせが不思議な読み心地。苦味と希望の混じったラストも素晴らしい。佳作。 長文感想⬇ https://note.com/nobetsu/n/n8454f30b5757 2023/02/07
ettyan えっちゃん
10
小島秀夫監督がおすすめの一冊と言うことで手に取ってみたが、大当たり面白かった。 恋人を奪われた男の血まみれの復讐劇という西部開拓時代の物語が大筋だが、主人公が中国人。しかも、魔術的な奇術団の一行とロードノベルになり、でも、血まみれの旅が続く。この救いのない物語は、何故か爽やかな雰囲気で終わり、預言者という謎の中国人が主人公より気にいる。本当に不思議な話だっだが最高にオススメの一冊2023/12/23