ちくま新書<br> 英語と日本人 ――挫折と希望の二〇〇年

個数:1
紙書籍版価格
¥1,012
  • 電子書籍
  • Reader
  • ポイントキャンペーン

ちくま新書
英語と日本人 ――挫折と希望の二〇〇年

  • 著者名:江利川春雄【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2023/01発売)
  • 夏休みの締めくくり!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~8/24)
  • ポイント 240pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480075314

ファイル: /

内容説明

英語ができるようになりたい! 幕末に「半文明人」として西洋に蔑視された日本人は、懸命に英語を学び近代化を成し遂げる。そこには挫折と希望が交錯した紆余曲折の物語があった。独学に励む若者、日本人にふさわしい学習法の模索、辞書編纂者の苦闘、教科書の中の戦争と平和、名・珍英語参考書の数々、英会話ブーム、小学校英語への賛否、グローバル人材育成や入試改革の是非――英語教育史研究の第一人者が、日本人と英語の悪戦苦闘の歴史をたどり、未来を展望する決定版。

目次

はじめに/第1章 「半文明人」から脱却せよ/1 英語と日本人の出会い/英語の襲来/幕府、英語修業を命ず/ついに英語ネイティブ教師がやってきた/英語が外交・通商用語に/幕府の英和辞典/ヘボンの和英辞典/2 文明開化は英語から/「半文明国」ニッポン/明治知識人の苦悩/都々逸にまで英語/鹿鳴館時代の英語ブーム/3 小中学校に英語がやってきた/最初の小学校英語ブーム/小学校英語をめぐる賛否両論/初期の中学校は外国語学校のよう/中学校英語授業のリアル/英語教授法を改革せよ/日本人にとって英語は難しい/4 文豪たちの英語力/英語と近代日本文学/夏目漱石も英会話が苦手?/島崎藤村の英語的文体/5 「半文明人」脱却の光と影/「半文明人」からの脱却/脱亜入欧とアジア蔑視/英語による二重の「地位上昇」/第2章 日本人にふさわしい英語学習法を求めて/1 立身出世と独学の鬼/なぜ英語を学ぶのか/未来を拓く英語の独学/小学校卒で大学教授になった田中菊雄/辞書の鬼・入江祝衛/豆腐屋をしながら教授への資格を得た柴田徹士/2 英語名人たちはどう学んだか/英語名人の学習法を探れ/第一位は多読/精読も大切だ/ネイティブの利用と暗誦/文法・音読・英作文の攻略法/学習法は目的・個性に合わせて/学習法を超えた内村鑑三『外国語之研究』/市河三喜の壮絶な英語学習/英語を学べばバカになる?/3 受験英語と英文解釈法/学習英文法と英文解釈法のすごさ/定番の英文解釈問題/入試によく出た作家/語彙を増やすには/第3章 英語廃止論と戦争の逆風にめげず/1 英語なんかいらない!?/欧化から国粋へ/明治の英語教育廃止論/「世界五大国」にのし上がった日本/英語教育をやめてしまえ!/2 コミュニケーション英語は必要か/「実用英語」を求める経済界/英語教育改革にカネを出す財界人/会話重視は日本人にふさわしいか?/英語は生活言語か学習言語か/小学校の生活英語、中学・高校の学習英語/英語は第二言語か外国語か/先人のまっとうな英語教育論/3 戦争と英語/教科書の中の戦争と植民地/反戦と革命のプロレタリア英語/女子に英語はいらない!?/英語敵視の社会で/大東亜共栄圏のための英語/敗戦の一因は陸軍の英語軽視/第4章 だれもが英語を学べる時代に/1 焼け跡の中の英語/アメリカ英語ブームへ/敗戦後の女性・子ども・政治家/英語の勉強は「戦争に負けたから」/小学校でも英語が盛んに/義務教育化する中学校英語/2 英語教師を再教育せよ/教科書に墨を塗らせた教師たち/英語教師が足りない!/現職教員の力量を高めよ/テント村で英語教員養成/3 アメリカの戦略と経済界の要望/日本人を親米化するアメリカ/英語教育改革を求める経済界/英文学と英文学科は絶滅危惧種?/4 多様化する英語の学び/大学受験ラジオ講座/テレビ英語講座/学校に浸透する英検/同時通訳者という魔法使い/第5章 グローバル化とAI時代の英語/1 国際化とコミュニケーション英語/強まる国際化、高めよ会話力/一九七〇~八〇年代の英語教育改革/国際ビジネスにTOEIC/TOEICで英語コミュニケーション能力は測れない/英語は実地に使ってみないと/2 「英語が使える日本人」か「受験英語」か/グローバル化へのあせり/「英語が使える日本人」育成構想/国の目標設定が忖度を広げる/変わる受験英語/英語参考書の新旧交代/参考書も音声とネット接続の時代に/3 グローバル人材育成という無理難題/グローバル人材育成という国策/大学入試にTOEFLの衝撃/英語教育、迫り来る破綻/「大学入試に英語民間試験」の破綻/学校の英語がたいへんな事態に/4 ポストコロナ・AI時代の外国語学習/協同的な学びで英語力を伸ばす/AI時代に外国語を学ぶ意義とは/デジタル・AIとどう付き合うか/デジタルの落とし穴/未来への希望/おわりに/主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐島楓

78
日本における英語学習の歴史をまとめたもの。かなり早い段階で英語の塾が設立されていたことなど、知らなかったことが多くて興味深かった。著者の独特なユーモアがにじみ出た文章もおもしろい。どう考えてもいまの大学受験用の勉強ではなくて、一年以上留学してしまわないと英語に限らずその土地のことばは身につかない気がする。いろいろと難しいことだけれども。2023/01/29

壱萬参仟縁

58
1907(明治40)年『余は如何にして英語を学びしか』という『英語界』編輯局編がある。内容は神田乃武、岡田由三郎など14人の巨匠が英語学習法を真面目に述べている(083頁)。内村鑑三『外国語之研究』で、1899年に出ている本もある。本書は、Fooleries of Japanese politicians are truly remarkable.(日本政治家のばかばかしきことは実に非常なり)(099頁)は、昨今の裏金、政治とカネが根深く、今も通用する例文だ。第5章で協同学習やアナログの見直しもある。 2024/01/23

踊る猫

38
200年という実に実に長い歳月を、日本人は「悲喜こもごも」に英語と接してきた。この本はそんな「英語狂想曲」についてウィットに富んだユーモアを随所にちりばめた文章で示し、実に読ませるファニーな1冊だ(だがその一方で「労作」と呼ぶこともぼくはためらわない、「濃い」本だとも思う)。いまなお続く日本人の英語コンプレックスについて、この本が示す歴史(とりわけ論争の記録)からいま一度学び直しそしてどう処方箋/ソリューションを自分たちに指し示すか。それを考える上でも本書は「マスト」な1冊ではないか。学びのお供に推薦する2024/02/28

サアベドラ

34
愛憎相半ばしながら続けられてきた日本の英語教育200年の歩みを専門家が(やや主観的に)わかりやすくまとめた新書。2023年刊。昨今の英語教育(TOEFLを大学入試に導入しようとして土壇場になって撤回した件など)は随分迷走していると感じていたが、本書を読んでみるとなんてことはない、日本の英語教育は初めから今の今まで迷走の歴史そのものであり、むしろ迷走が平常運転なのであった。その時々の政治家や財界人の英語や外国語学習に対する無理解が主な原因と思われるが、それにしてももう少しどうにかならんかったのか。2023/06/29

Nobu A

12
江利川春雄先生著書8冊目。相変わらず濃い一冊。英語教育史を書かせたら右に出る者がいない。前著と被る箇所が散見されるが、英語と日本人の関係性を理路整然と紐解き、挿入される明晰な考察が織り成す論考は読み応え十分。いや、十二分。教育・研究者としての矜持も伝わり、文面に垣間見る人柄(例:「こんな英語を知らなくても、中からノックを返せば済むことだが(p. 206)」)が微笑ましい。協同学習に関する知見がもう少し欲しいが、知識欲を掻き立てられた。やっぱり最新情報満載の新刊は頁を捲る際の脳内ドーパミン放出量が増える。2023/02/23

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/20485754
  • ご注意事項

最近チェックした商品