内容説明
好評の〈文豪怪異小品集〉最新作は、生誕150年を迎える伝奇の巨人・岡本綺堂。「五人の話」史上初復刻の他、随筆等も含め精選。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
66
素晴らしい。綺堂の怪談は数多いけど、名作をあえて排し、ほぼ顧みられなかった作品や戯曲、実話怪談に随筆といったものを収録するそのスタイルに脱帽。逆にいけば著者の作品を読みなれた玄人向けともいえるけど、名作佳作を何度も読んだ身としては初読の作品が読めるだけで堪らないわけですよ。冒頭の「五人の話」は初期の作品らしいけど、後年の名作の萌芽がはっきりと見て取れるのは読んでいて嬉しいし、「妖怪実譚」は江戸明治の実話ものとしてこのジャンルが好きな者には堪らない。綺堂を読みなれた人にもまだの人にもお勧めな一冊です。2022/08/24
やいっち
57
綺堂の本は何冊目だろう。嘗て『半七捕物帳: 時代推理小説 (1) 』(光文社文庫)を読んだ際、「語り口の粋なところ、いかにも世間通、人間通、それでいて人情味があって、読んで安心感を覚える。」なんて呟いたが、本書もそう。比較的初期の作品集らしくやや物足りない感がなくもないが、それでも講談調というか、綺堂の声が聞こえるような気がした。2025/08/08
藤月はな(灯れ松明の火)
52
「奇術師の話」の愛憎が渾然一体となる不可思議さは実はよくある。「人魚の話」はあの家族にとって人間界こそ、区外だったのだと思うとメリーバッドエンドだったのかな。「大磯の話」の乙女の残酷性の発露と家庭に入ってからは大人しくなったという呆気なさが醸し出す不穏さに背筋が粟立つ。「お文の魂」の元ネタである表題作は純然たる怪談だった。時代だけにお住さんへの仕打ちに絶句。彼女が今更ながらに迷い出たのはご隠居が寿命が尽きそうだったからではないだろうか。「お前はなかった事にしたが、私は忘れない。そちらに来たら容赦はせぬぞ」2022/08/25
かおりんご
26
ホラー。やっぱり岡本綺堂はいい!古典怪談は、面白い。青空文庫にもあるので、そちらも読んでみようと思う。2023/05/21
凛風(積ん読消化中)
12
岡本綺堂って、出ると、つい買ってしまう。なので、いくつかは読んだことがあるし、いくつかは読んだことのあるものの前身なのだけれど、この、前身がなかなかに面白い。あぁ,最初はこんなオチだったのが、あとで、あんなオチに変わったのね、などと思いながら読むも良し、はじめて手に取る人が、現代的ホラーとは違った、風雅な怪談に触れるも良し、楽しみ方は色々だと思います。カバー絵が一番ホラーっぽいです。中身は江戸情緒を残した明治の日本の、夜はちゃんと暗くなる時代の空気が感じられる作品が多く、やっぱりこの人好きだわ、と再確認。2022/08/30