内容説明
ロシア正教会のキリル総主教はなぜウクライナ侵攻を支持するのか?戦争の一因となったウクライナ正教会独立問題とは?ロシア正教会千年の歴史から、ロシアとウクライナの対立を読み解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
122
プーチンがウクライナ侵攻を決断した理由について、当初から不可解なものを感じていた。彼ほどの政治的リアリストなら韓国よりGDPが低いロシア経済の実情も承知しており、戦争でなく時間をかけて外交と内政干渉でウクライナをロシアの実質的支配下に置く方法などいくらでもあったはずだから。しかし元駐ウクライナ大使の著者は、「第3のローマ」を自任ずる正教会に根源を見る。旧ソ連を正教の勢力範囲として再統合を目指すプーチンは、ウクライナがロシア正教会から独立をめざすのが許せなかった。つまりこの戦争は、ロシアからの十字軍なのだ。2022/11/06
Isamash
34
2019年まで駐ウクライナ大使だった角茂樹・玉川大客員教授2022年発行著作。ロシア正教会の歴史が詳しく書かれていた。ウクライナの宗教が3つに分かれ複雑であることも分かった。ゼレンスキー大統領の侵攻前の支持率7%という超不人気も初めて知った。ただウクライナがどういう国なのかとの個人的見解的なものは記載も乏しく、期待するものは得られ無かったのは残念。今の戦争に勝てる、或いは負けない要素は何かあるのだろうか?そのヒントを知りたかったのだが。2014年以降ドンパス地方でロシア支持者は減ったとの体験報告は貴重か。2024/04/03
まると
29
この前読んだ本で、ドイツとポーランドのカトリック教会による「赦し合い」が国同士の和解を先導したと教わり、国境を超える宗教の力の強さを思い知らされたばかりだというのに、同じキリスト教でも少し東にずれると、教会はただ対立をあおるだけの存在に成り代わってしまっているようだ。ここでもまた、モスクワとキーウの複雑な歴史が絡み合っているらしい。この国の地政学的な難しさは宗教に最も象徴的に現れているということなのだろう。ローマ教皇庁と正教会の分派・対立の歴史、教義の違いをわかりやすく解説した第1章がとても勉強になった。2023/07/27
kan
27
駐ウクライナ特命全権大使を務めた著者による、今回のウクライナ侵攻の背景解説だが、よく語られるNATO拡大阻止という側面ではなく、宗教というレンズを通して詳細に両国の歴史と衝突を解説する。正教会の概要と、ロシア正教会とウクライナ正教会の独立、そしてそこへの干渉が順を追って述べられるが、正直に言うと私には難しく、複雑すぎて半分も理解できていない。ウクライナはカトリック文化とスラブ文化の狭間で独自性の高い豊かな文化の融合の地であるがゆえに、さまざまな国の支配を受け、翻弄されてきたことが実感できてつらい。 2023/01/04
紙狸
25
2022年8月刊行。著者は2014-19年に駐ウクライナ大使を務めた元外交官。「正教会」を縦糸にして、ロシア・ウクライナ関係史を語る。最初の方は、正教会とカトリック教会の分裂の経緯などキリスト教の歴史が続いて、教科書的だ。19世紀のあたりから面白くなる。ウクライナ危機報道で断片的にしか出てこない宗教の側面が、一貫性をもって語られる。プーチンは、ウクライナの正教会がモスクワの正教会から独立する動きに苛立った。ロシアとウクライナの「一体性」という彼が掲げる歴史観を掘り崩しかねないからだろう。2022/09/05
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