内容説明
「幸せになっても良いのでしょうか」
──人殺しの家族と呼ばれても、ともに生きるという道を探す理由。
ある日突然、家族が殺人を犯してしまった。
加害者家族と呼ばれる受刑者の家族は、その瞬間から、
過剰なマスコミ取材、ネット上での根拠のない誹謗中傷やいやがらせを受け、
辞職に追い込まれる、引っ越しを余儀なくされるなど悲惨な生活を強いられる。
そのような状況でも、罪を犯した家族を支え、そして更生の道を探るべく
「ともに生きる」決断をするのは、なぜか。
重大事件の加害者家族に寄り添い続ける著者だからこそ描けた
加害者家族の現実とその後の人生、
そして現代日本の抱える「家族」のいびつな形とは。
【目次】
はじめに
第一章 上級国民と呼ばれた家族──東池袋自動車暴走死傷事故
第二章 夫の無実を信じる純粋な妻の悲劇──東北保険金殺人事件
第三章 揺るがない兄弟の絆──岩手妊婦死体遺棄事件
第四章 死刑囚の支援者と葛藤──宮崎家族三人殺人事件
第五章 なぜ加害者家族支援を続けるのか
第六章 家族はどこに向かうのか
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
86
日本で始めて犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立した著者。犯罪や事故の加害者側の苦悩や戸惑いをいくつかの事例をもとに紹介。加害者側にインタビューすると何を言っても、行動してもほとんどがよい方向にとられず中には酷い中傷や、作り話に発展することも多いという。被害者は当然のことだが加害者の家族はときに一家離散、日本のどこかでひっそりと身元を隠しながら生活していると考えると心が痛む。私も新聞やテレビそしてSNSで報じられていることをほとんど違和感なしに信じてしまっている。ここは反省しなければ・・・・図書館本 2024/08/14
読特
48
過剰なバッシングを呼び起こしたあの事故。冤罪が疑われる事件。妊娠中の妻を殺した事件。家族3人の殺害事件。…もしも加害者の家族になったなら、どんな気持ちになるだろう。その日は突然訪れる。明日かもしれない。覚悟はない。被害者側への謝罪。許されない。会うのも拒否される。生きていくのも嫌になる。藁にもすがりたい。誰かに聞いて欲しい。…今日も事件や事故に巻き込まれず、平和に過ごせた。この1日に感謝する。大事なことは何も起きないこと、起こさないこと。そのために被害者と加害者とそしてその家族の”靴を履いて”考えてみる。2024/12/15
たまきら
45
読み友さんの感想を読んで。家族が殺人犯になった時どうすればいいのか?4つの事例を読みながら、なんと難しい問題なのだろう…と悩みました。最初のケースはメディアでも大きく取りざたされた「東池袋自動車暴走死傷事故」で、著者の考えが一番よくわかる事例でもありました。けれどもどの事例もあまりにも事情が違いすぎて、どうサポートしていいのか考えも及びません。…それはきっと、SNSで断罪することはせずとも、(罪は罪だから)と思っている自分がいるからでしょう。でも過失致死は誰でも起こす可能性がある。悩ましいです。2024/09/27
ゆみきーにゃ
29
作家読み2023/06/11
オリーブ
25
大切な家族が事件に巻き込まれる恐れを抱くことはあっても加害者になることを予測する人は少ないもの。世間は加害者家族、被害者家族に対してある一定の勝手なイメージ通りでないとバッシングをするものでどちらの立場でもある日突然犯罪に巻き込まれ戸惑う人々へ世間が押し付ける価値観からの解放が重要でその為の支援をしていると仰る著者。「沈黙を余儀なくされた人」という言葉が重い。第三者が被害者の気持ちに寄り添うあまり正義の味方になったつもりになってバッシングをすることが被害者に寄り添うことになるのだろうかと考える必要がある。2023/03/08