内容説明
「20世紀最後の巨人」の脱神話化を試みる決定版
世界を牽引した指導者、「最後の偉大なフランス人」シャルル・ドゴール。彼は巧みな戦略家であり、ひとつの政策に固執する反面、融通無碍な政治家でもあった。派手さを嫌う性格でありながら、ショーマンシップも発揮した。悲観と楽観のあいだを揺れ動き、自信を喪失したかと思うと、自己をフランスと一体化させ、君主であるかのように振る舞った。人びとの心にほとんど宗教的な崇敬の念を吹きこんだ。国民の統一を希求したが、その手法や政策はフランス社会に分断と対立を生み、ドゴールが憎悪の対象ともなった。
従来のドゴール伝が礼賛か批判かに偏りがちだったのに対して、本書は時代ごとの世界情勢や政治的状況、経済的環境のなかにドゴールを位置づけ、著作、書翰、発言、さまざまな同時代人の証言、新公開されたフランス国立文書館収蔵のドゴール文書など膨大な資料を駆使して、その全体像を中立かつ客観的な視点から記述する。さらに本書の大きな魅力は、資料の綿密な分析に基づいて、「人間ドゴール」の複雑な性格を浮びあがらせている点にある。英国の世界的権威による、ドゴールを主役にした「20世紀フランス史」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
18
下巻は1947年から1970年まで。フランスの防衛政策を大西洋同盟から引き離し独自の核抑止力創造へと向かう。フランスの独立を全方位から(敵からと同様に同盟国からも)守るという信念が窺える。同時にアルジェリア問題ヘの対応に苦慮する様子はこの問題がフランスの歴史においても重い意味を持つことを改めて感じた。◇国としての大きな野心をもつ、そのための闘争、周りはたまったものではないが、フランスの名誉を救った男として歴史に名を刻んだことは確か。◆上下巻に渡る評伝は読み応えがあった。これも読書の醍醐味。2023/03/09
TK39
6
第二次世界大戦後の10年強を経て、再び権力を握る。しかも第四共和制を打倒し、大統領の権限を強める。ド・ゴール主義=フランス第一主義、反米と言えるが、第二次世界大戦時に散々米英に助けてもらいながらも、フランス第一を貫くのはフランス人ならではであろうか。 アルジェリア戦争についてはド・ゴールが何を考え、何をしたかが中心であり、アルジェリア戦争そのものの記述はあまりないのが残念。 後半はなかなか読むのが辛かった。 2025/05/13
大森黃馨
4
自分はどうしても偉人=聖人と考えがちなのだかそれどころかドゴール氏は辛うじて一線を踏み越え無かったヒトラーの様に思えたそれでもかなりえぐいことをしているが 交渉では先ずノンと叫び花瓶をひっくり返して事を荒立てるのを優先し二大イデオロギーの対立準備安定化国際協調よりも漁夫の利を得て国家の関係が乱れてもはったりを仕掛けても仏の国際的地位の上げるを優先し目指した男だがそれも全ては祖国をひたすら一途に愛していたから(無論凄まじい権力欲もあるのは当然だろう) 祖国と己とを同一視した男(続く) 2022/09/14
junkoda
3
イギリス人の報告「彼は同情と謙遜というキリスト教の美徳のどちらももたない。不寛容、悪辣、執念深く、狭量、感謝を知らない。」それでも危機にあっては現実を理解予見し最終的にには正しい判断を下すことがリーダーとして最も重要だったに違いない。2023/08/24
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