内容説明
大戦末期。東京から宮城の田舎へ集団疎開した浜野清子は、そこで那須野リツと出会った。対立する「海」と「山」の呪縛か、無意識に忌み嫌い合うふたりの少女。だが、戦争という巨大で最悪の対立世界は、彼女たちから、大切な存在を奪ってゆく……。宿命に抗いはじめた少女たちが願う、美しき未来とは――。
特別書き下ろし短篇収録。〈解説〉瀧井朝世
【電子版巻末に特典QRコード付き。〈螺旋プロジェクト〉全8作品の試し読みを読むことができます】
※〈螺旋プロジェクト〉とは――
「共通ルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をみんなでいっせいに書きませんか?」伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8作家朝井リョウ、伊坂幸太郎、大森兄弟、薬丸岳、吉田篤弘、天野純希、乾ルカ、澤田瞳子による前代未聞の競作企画
〈螺旋〉作品一覧
朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』(本作)
天野純希『もののふの国』
伊坂幸太郎『シーソーモンスター』
乾ルカ『コイコワレ』
大森兄弟『ウナノハテノガタ』
澤田瞳子『月人壮士』
薬丸岳『蒼色の大地』
吉田篤弘『天使も怪物も眠る夜』
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
254
螺旋プロジェクト第5弾。10話+後日譚となる書き下ろし特別収録短篇。時は昭和19年(1944)。第二次大戦末期。小学6年生の清子が、螺旋プロジェクトの設定をアクセントとしながら、疎開先の暮らしの中で自我を形成してゆく物語。戦争に関する嫌悪感の様なものをここで言ってもしょうがない様な気がするので止めておきます。終幕の件はこれ迄の螺旋プロジェクトのそれとは一線を画す様に思えました。これからの展開にも影響するのかな。と思いましたけど、時代順に読んでいますが、発表順とは違いますもんね。【螺旋プロジェクト🧬】2025/03/21
dr2006
58
共通のルールを決めて複数の作家が歴史物語を書く「螺旋プロジェクト」の1冊目は、自分と同じ北海道出身の作家:乾ルカの「コイコワレ」だ。海と山とが相いれない伝承、忌み嫌い合う二人の少女が主人公だ。大戦末期の昭和19年、蒼い目をした浜野清子は、疎開先となった東北の山寺で、尖った耳を持つ那須野リツと出逢う。二人が互いに相手を無意識に避けてしまう「呪縛」とは?プロジェクトの作品には共通のキャラクターが登場するらしい。本作単独でも完結していて面白かったけど、続けてこの螺旋PJの伊坂幸太郎「シーソーモンスター」に進む。2025/07/15
まあか
58
嫌いな者とどう向き合うか?どう付き合っていけばよいのか?その問いを何度も何度も、心に訴えかけてくる。嫌いだからと相手を攻撃するのは、弱い者のすること。どんなに嫌いでも、自分の中の憎しみの心と戦い、自分で気持ちを諌める。とても大切なことを教えてくれた本でした。初読み作家さんですが、いい(^^)他の本も読んでみたい。螺旋プロジェクト5冊読みました!あと3冊!2023/03/01
エドワード
56
この物語のテーマは「敵同士であっても解りあえる」ことだ。太平洋戦争末期、浜野清子は、母から<お守り>を渡され、東京から宮城県へ集団疎開する。眼の蒼い清子は、妖怪の目と嫌われる。地元の那須野リツは、拾われっ娘の山犬と虐げられる。孤独な二人がお互いを敵視する―相容れない種族だからだ。リツは秘かに慕う健次郎の出征に<お守り>を渡そうと、清子の<お守り>を盗む。しかし健次郎は謎の死を遂げ<お守り>は砕け散る。リツは不思議な力に動かされ、東京へ帰る清子のために<お守り>を作る。果たして<お守り>は清子を守れるのか?2023/04/02
みこ
46
螺旋プロジェクト戦争編でもあり私にとってはラストの一冊。蒼い目が原因でいじめられている清子は母のお守りを手に仙台へ疎開しそこで山族のリツと出会う。表紙や刊内のイラストからもう少し二人の設定年齢は高めかと勘違いしていた。他作とは異なり二人とも少女ゆえに言動が純粋で時に愚かなものになってしまうものの、二人の成長を山に住む源助やリツの祖母であるタマのような目線で見守りたくなる。吉田篤弘作品のキーアイテムであるラムネも登場。2023/01/29