内容説明
「痛いやんけ……」エリート官僚・稲田は、故郷の奈良で車を走らせていたところ一頭の鹿を轢いてしまう。慌てる稲田をよそに鹿は草むらに隠れ繰り返し呟き始めた。その声は高校時代の親友・市田理一郎の声だった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobby
90
奈良に由来のある古典や文学を取り扱うのではなくて、奈良を舞台にしたパロディといったところ。ご当地観あればより楽しめる11短篇。とにかく緩くて楽しめるのは間違いない!原作既読なら趣向にニヤリ、未読なら俄然興味が湧く感じ。いつもながら、学生時代に知識としてのみ詰め込んでいた作品群を、当時からこんな風に味わえていたらなぁと思うばかり…それでも「ファンキー竹取物語」に着いていける若さはもう無いかも(笑)「若草山月記」での虎から鹿に変更はハマってる!残念なのは宮澤賢治に疎く「うみなし」ナラムボンにピンと来ない自分…2023/11/10
ほのぼの
66
日本文学の名作を現代の奈良に生まれ変わらせたパロディ。原作の面影を微かに残しながら、近鉄沿線を舞台に無惨なまでに書き換えられたストーリー。(笑)かつて奈良に住んでいた経験がこれほど役立った事は他に無いw。大和西大寺の4番線から3番線に【電車の中を突っ切って】移動するとか、西大寺駅を利用する輩にしか理解できないネタだろう。『ファンキー竹取物語』が最高に笑える。文体は古文なのにギャル語・流行語をふんだんに使ってファンキーに仕立てた物語。【さてもLINEしたるや?】【げにキモし】笑える。誰かに読んで欲しくなる。2025/07/08
shikashika555
45
主に現代文豪作品からのパスティーシュ11編。 一番好きなのは「山月記」からの「若草山月記」。 宮沢作品からの「うみなし」もとても良かった。 パスティーシュやパロディって感想を書くのが難しい。あらすじは有名だし、細かいところを書けばネタバレになるし、いっぺん読んでみてくださいとしか言えないような気がする。 「大和桜の満開の下」元作品での女と本作の黒猫、ともに主人公の判断力を奪い力を吸い取るものではあるが、結末は本作オリジナルですばらしい物だと感じた。 巻末「耳成浩一の話」は映像化に向きそう。2022/12/25
よこたん
37
“…どん、お前だったのか。いつも当行のシステムメンテナンスをしてくれていたのは (どん銀行員)” なんとなく森見さんの『新釈走れメロス』がちらつく感じではあったが、奈良県、特に近鉄沿線にゆかりのある人にはたまらない一冊であるはず。大和八木、大和郡山、信貴生駒スカイライン、高田川の桜、奈良町の鹿、若草山、日本最長の路線バス八木新宮線、耳成…を舞台に名作をアレンジ。きゃあきゃあ言いながら読んだ。「大和の桜の満開の下」「耳成浩一の話」「どん銀行員」が好き。ニヤニヤしたり、切なくなったり、ぞわりとしたり。2023/12/27
えも
32
奈良を舞台にした日本文学パロディ集▼もう、奈良はどうしてこんな作家ばっかり?軽く思い出すだけで、鹿男や、祇園宵山や、満月と近鉄。奈良愛が強すぎる▼ということで、特にファンキー竹取物語は通勤電車で読んではいけません!2023/04/28