内容説明
望楼館、かつては田舎の大邸宅だったが、今や積み重なった歳月に埋もれたかのような古い集合住宅。そこに住んでいるのは、自分自身から逃れたいと望む孤独な人間ばかり。テレビドラマの世界に生きる女、汗と涙を流し続ける男、人間であることを忘れ犬のように暮らす女……。語り手であるフランシスは、常に白い手袋をはめ、他人が愛した物を蒐集し、秘密の博物館に展示している。だが、望楼館に新しい住人が入ってきたことで、忘れたいと思っていた彼らの過去が揺り起こされてゆく。鬼才ケアリーのデビュー作にして比類ない傑作、ここに復活!/解説=皆川博子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そふぃあ
24
半ば打ち捨てられた廃墟のように佇む大きな建物、望楼館。時代に取り残され周囲が道路となった陸の孤島である館に住むのは、常に白い手袋をしていないと平常心を保てない主人公や、身体中の汗が止まらず全身の毛を剃ってしまった男、自分を犬だと思い込んでいる犬女など、一風変わった孤独な人々しかいない。ある日新しい住人がやって来たことで彼らの日々は変化していき、固く閉ざしていた過去が蘇り始める。切なくて不思議と懐かしさを覚える、寒い静かな冬に読みたくなるような愛おしい物語だった。2023/02/17
かわうそ
22
孤独で奇妙な人々の歪だけれど純粋な行動原理に惹きつけられて物語への没入度が凄かった。登場人物への視線は淡々としながらも優しくて、「なんて奴らだ」と思いながらも最後にはその奇妙さ不器用さが愛おしくなってくる感じ。面白かったです。2023/02/15
本木英朗
18
英国の現代幻想小説家のひとりである、エドワード・ケアリーの、比類なき傑作である。俺は東京にいたころに文春文庫で手には入れていたが、まったく読めなかったため、創元の新版でもう一度ということである。孤独で奇矯な住人ばかりの古い集合住宅・望楼館。だが、新しい入居者の存在が、忘却の彼方にあった彼らの過去を揺り起こす……という話である。これはもう、読むしかないってば。さすがは作者であります。大満足でした!!2023/07/23
R子
14
主人公フランシス・オームの白手袋と蒐集癖の理由に思いを巡らせがら楽しく読んだ。他者を受け入れようとしない彼の頑なな態度がいじらしい。けれど過去が紐解かれるにしたがい、その不器用さをいとおしく感じた。自分ひとりでは向き合えないことがある。人との関わりやその人の生きる姿勢に触れることで、はじめて世界が動き出すことってあるよね。奇妙で可笑しくも切なく、最後はあたたかいお話だった。復刊に感謝。2023/04/23
しゅー
7
★★★★「創元」の文字で手に取るがミステリではない。文芸作品というのは気づいたけれど名作の予感がしたので購入する。最初のページから惹きつけられた。あのダークファンタジーの名作「ゴーメンガースト」を読み始めたときの気分と一緒なんである。(あとがきで著書もマーヴィン・ピークが好きと知る)奇妙で汚らしくて暗い話なのに何故だか感情移入して読み進めてしまう。全員が追憶の中に生きる望楼館の住人たち、人との直接的なコミュニケーションを避ける主人公、そこに乱入してくる新しい入居者。安易な癒やしの物語に進まないのが三重丸。2023/08/20
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