内容説明
似ているが……ここは私の世界じゃない――
作品初出は、コロナ禍で行動制限中の日経新聞夕刊
主人公が迷い込んだ異世界が現実を先取り?
ある朝、通勤と反対方向の電車に、魔が差して乗ってしまった。山の中をさまよい、戻ってくると、誰もマスクをしていない!
今朝の会議はユーツ。こんな生活、いつまで続けるんだ……ぐだぐだ考えているうちに出てしまった下り電車は「急行」。次々と通過していく駅を見ながら40歳の野崎修作は「ろくでもない毎日からの脱出」とサボりを決める。スーツで山に登り、「日常」に戻ると……ん? 何かおかしい、街も家も会社も。どこかで聞いたような疫病が世界を分断していた。新宗教の持つ票があらゆる選挙を左右するらしい。「正義」に縛られた人たちはネット上で……ここは私のいるべき場所じゃない。私の世界へ帰るのだ。
目次
I.異世界の扉はどこにあったのか?
II.似ているがここは私の世界じゃない
III.どうすれば元の世界へ戻れるだろう
IV.私は私の世界へ帰るのだ
V.異世界は今日も雨だった
VI.そしてまた旅が始まる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
315
2023年2月の第一作は、荻原 浩の最新作、荻原 浩は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、マルチパラレルワールド夫婦ファンタジーでした。私は、約35年の会社生活でズル休みしたことはありません(笑) https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/22/11/22/00514/2023/02/01
いつでも母さん
186
荻原さんがコロナ禍のど真ん中に、日経新聞で連載したパラレルワールドの話。『似ているが……ここは私の世界じゃない』怖いよね。選べるの?行きたい世界なんてある?皆が皆そんなこと体験していたらこの世界はどうなっちゃうんだろ?違う世界でも会いたい人はいるけれど・・臆病な私はこの世界で生きて行くよ。多分ここが私の世界。選び続け、迷い続けるのか野崎は・・2023/01/18
のぶ
180
今まで読んだ荻原作品の中でも一番不可思議な小説だった。事の始まりは主人公の野崎がある朝、いつもの駅で会社へ行く上り電車ではなく、下り電車の方に乗ってしまった。終着駅まで行って、山に登って、戻ってきたら異世界に迷い込んでしまった。サラリーマンなら現実逃避してこんな行動に出たくなることはありますよね。この先はパラレルワールドの世界に入っていくのだが、そこはコロナのない世界。さらにいろいろな世界に迷い込んでいく。日常から異世界に紛れ込んだ主人公が、あたふたする様子が面白おかしく、ちょっと物悲しい感じだった。2023/01/12
ひさか
160
日本経済新聞朝刊2021年1月4日〜12月28日連載のものを2022年12月日本経済新聞出版から刊行。通勤ルートから外れて今と少し異なった世界に迷い込む男の話。異世界での出来事がややコミカルに描かれるが、似たような繰り返しが多く、冗長で、興味が持続せず、共感できる部分が少ない。ラスト付近の元世界への帰還を目指すところで、一旦盛り上がるものの、持続せずに終わってしまった。残念。2023/02/05
しんたろー
158
荻原さん新作は、40歳のサラリーマン・野崎を主人公にしたパラレルワールド系の物語…ある日、出社が嫌になって反対方向の電車で知らない土地に来た野崎が、それまでの世界と微妙に異なる世界へ迷い込む…野崎が遭遇するチョット変な事象が「ありそうだなぁ」という絶妙な匙加減で、笑えたり考えさせられたりして楽しい。ユーモア&皮肉が効いた軽妙な会話や、テンポよく次が気になるように進む展開も巧みでサクサク読めた。旧作の『僕たちの戦争』で「この手の話も巧い!」と思ったが、同系の本作も職人芸とも言える「荻原節」健在で満足だった。2023/07/20