母という呪縛 娘という牢獄

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母という呪縛 娘という牢獄

  • 著者名:齊藤彩【著】
  • 価格 ¥1,815(本体¥1,650)
  • 講談社(2022/12発売)
  • ポイント 16pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065306796

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内容説明

深夜3時42分。母を殺した娘は、ツイッターに、
「モンスターを倒した。これで一安心だ。」
と投稿した。18文字の投稿は、その意味するところを誰にも悟られないまま、放置されていた。
2018年3月10日、土曜日の昼下がり。
滋賀県、琵琶湖の南側の野洲川南流河川敷で、両手、両足、頭部のない、体幹部だけの人の遺体が発見された。遺体は激しく腐敗して悪臭を放っており、多数のトンビが群がっているところを、通りかかった住民が目に止めたのである。
滋賀県警守山署が身元の特定にあたったが、遺体の損傷が激しく、捜査は難航した。
周辺の聞き込みを進めるうち、最近になってその姿が見えなくなっている女性がいることが判明し、家族とのDNA鑑定から、ようやく身元が判明した――。
髙崎妙子、58歳。
遺体が発見された河川敷から徒歩数分の一軒家に暮らす女性だった。夫とは20年以上前に別居し、長年にわたって31歳の娘・あかりと二人暮らしだった。
さらに異様なことも判明した。
娘のあかりは幼少期から学業優秀で中高一貫の進学校に通っていたが、母・妙子に超難関の国立大医学部への進学を強要され、なんと9年にわたって浪人生活を送っていたのだ。
結局あかりは医学部には合格せず、看護学科に進学し、4月から看護師となっていた。母・妙子の姿は1月ころから近隣のスーパーやクリーニング店でも目撃されなくなり、あかりは「母は別のところにいます」などと不審な供述をしていた。
6月5日、守山署はあかりを死体遺棄容疑で逮捕する。その後、死体損壊、さらに殺人容疑で逮捕・起訴に踏み切った。
一審の大津地裁ではあくまで殺人を否認していたあかりだが、二審の大阪高裁に陳述書を提出し、一転して自らの犯行を認める。

母と娘――20代中盤まで、風呂にも一緒に入るほど濃密な関係だった二人の間に、何があったのか。
公判を取材しつづけた女性記者が、拘置所のあかりと面会を重ね、刑務所移送後も膨大な量の往復書簡を交わすことによって紡ぎだす真実の物語。
獄中であかりは、長年別居していた父の手厚いサポートを受け、多くの「母」や同囚との対話を重ねた。そのことが、あかりに多くの気づきをもたらした。
一審で無表情のまま尋問を受けたあかりは、二審の被告人尋問で、こらえきれず大粒の涙をこぼした――。
気鋭の女性記者が、殺人事件の背景にある母娘の相克に迫った第一級のノンフィクション。

目次

序章 面会の日
「第三者」の面会申請
アイスブレイク
母の呪縛から逃れたい
第1章 懲役一五年
黄色い物体
母と娘のLINE――2017/10/18(1)
証言の矛盾
母と娘のLINE――2017/10/18(2)
浴室で解体しました
母と娘のメール――2017/12/24
「殺人」を認定した判決
第2章 モンスターを倒した
一転した供述
控訴審での告白
なぜ話す気になったのか
第3章 母と娘
湖畔の街
交錯する長針と短針
「透明な膜」の中で
父が家を出た
第4章 詰問、罵倒、蒸し返し
「アメばあ」
薬缶の熱湯を浴びせられ
ブラック・ジャックになりたい
第5章 医学部目指して
「人の上に立つ職業に」
狭き門、高きハードル
棄権できないレース
第6章 「娘は合格しました」
蜃気楼
偏差値一〇ポイント分のお仕置き
「肉親再会」
お母さんに回し蹴りされた
合格したって言いなさい
総絞りの振袖
「寮に住ませてください」
第7章 九年の浪人生活
二〇歳になれば
血文字の反省文
母の自殺未遂
一〇〇万円を持って脱出
あかりの置手紙――二〇一三年一二月
トンネルの出口
合格と解放
第8章 助産師になりなさい
二七歳の新入生
やっと普通の母娘に
また約束を破りやがって!
母に提出した始末書
深夜三時の土下座
第9章 黄色いコップ
母と娘のLINE
母のいない人生を生きる
四〇〇メートル先の遺体
身元発覚
あなたは嘘を言っている
否認の法廷
第10章 家族だから
殺人容疑
父との面会
もう嘘をつくのはやめよう
雑居房の同囚
私が殺しました
判決を聞いて気持ちが変わった
罪の涙
終章 二度目の囚人
刑務所の日常
ひんやりとした親しみ

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

青乃108号

584
この本を読んで、娘に殺されバラバラにされた挙げ句遺棄された母親に、哀悼の意を寄せる事が出来る人がいるのだろうか。誰もいやしないと思うから、せめて俺は母親側に立って書いてみよう。母親はおそらく病んでいた。娘に依存して、娘を助産師に仕立て上げる事のみをレゾンデートルとして、何度も何度も裏切られ何年も何年もその呪縛から解放されず、結果次第に狂気の淵に追い込まれどうしようもなく娘に牢獄の責め苦を与え続け、結果的にまさか我が娘に自身が殺されようとは。何故、途中で助けを求められなかったのか。友達にも夫にも。哀しい。2025/05/09

ノンケ女医長

568
2人の女性が抱き合う表紙。背の高い女性には、後頚部に包丁が。このような距離でしか、母との関係を終わらせる手段はなかった。幼い頃から、拡大していく要求、暴力に人格否定。親から「死ね」と毎日言われ、子どもは健やかに生きられるはずがない。大学合格時、体重は92kg。常軌を逸した母は、医療を必要とする人だった。事件で、娘の心の傷は、おそらくもう二度と癒えることはない。あかりは、拘置所で初めて、母を殺めたことに涙を流す。誰にも打ち明けられなかった地獄の体験を、法廷で淀みなく告解するあかりの生き方に、思いを馳せる。2023/07/15

読特

521
子に物事を教えることは親の勤め。叱ることも時には必要。ついムキになってしまうこともあるだろう。虐待にエスカレートしないように常に警戒しなければならない。血の濃すぎる親子関係。何らかの欠陥が相補しながら増幅してしまう。第三者も目を光らせねばならない。起してはいけなかった事件。加害者が救いを求めた教員は虐待を認識したが何もできなかった。他人が手を出しにくい雰囲気と仕組み。制度に問題があるのなら整備していかなければいけない。親と教職者だけではない。子育ては誰もが当事者。第三者の目としても、国の主権者としても。2023/11/26

はにこ

445
ここまででは全然ないけど、自分の母も持っていたんではないかという気がした。子供への過大な期待と呪縛。私は祖母や父や近所の人に救われたけど、主人公は本当に救ってくれる人が居なかった。特に父親はひどい。逮捕後に手を差し伸べるのならこんな生活を許すなよと思う。9浪もしている時点でおかしいだろ。こんな結果になるなら母親が自殺するっていう脅しに負けなければ良かったのに。洗脳されていて無理だったのか。2023/07/20

nonpono

333
著者が90年代生まれだとは。わたし自身、幼稚園から受験している。曖昧に受験勉強のテキストの記憶がある。中学入試ですべり止めの私立の女子校に受かりだけど大学は一般入試。あの結果を待つ間のヒリヒリとした時間は忘れない。バラ色のキャンパスライフか灰色に見えた浪人生活かと。お受験に囚われる人をたまに見る。自分が学歴で苦労をしたならその分を子供に賭ける。自分の人生さえも賭ける。子供は良い応援団として解釈するかその背中の重みが言葉による暴力が体をきしませる。痛い、重い、辛い。お父さんの存在が最後に支えになって良かった2023/10/17

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