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内容説明
「プーチンも悪いが、ウクライナも悪い。どっちもどっちだ」。国際法や倫理など歯牙にもかけない言論を、われわれが現代日本の知識人から聞くとは夢にも思わなかった。しかも、同じ風潮は欧米人の言論にも垣間見える。そう、民主主義はまだまだ世界に広まっていないのだ。21世紀において自由と民主主義の強さを証明したのが、ロシアに対するウクライナの抵抗だった。ところがウクライナ人に対し、降伏や「妥協による平和」を勧める信じ難い人々がいる。一般に、自由と民主主義は戦争に弱く、独裁主義は強いと思われている。しかし歴史を紐解けば、むしろ逆である。独裁体制の国は、民主主義国に対して経済でも軍事でも敗北を重ねてきた。ロシア経済は一見、天然ガスと石油の価格高騰で優位に映る。だが実際には、ロシアのGDPは「韓国並み」である。短期・中期・長期にわたる経済制裁の効果が発揮され、技術も資本も入らなくなる。さらに、豊富な天然資源はかえって経済低迷を招き、天然資源が豊かな国ほど貧困の深刻化や経済発展の遅れに悩まされる、という。すなわち「資源の呪い」である。本書を貫くのは「自由と民主主義は、危機においても有効に機能する」という考え方である。命懸けの戦いを愚弄する知識人を正し、ロシアの惨憺たる経済力と軍事力、独裁者プーチンの大失策を明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新父帰る
6
2022.12刊。権威主義国家が実は民主主義国家と戦争した場合に負ける可能性が高いことについて言及した箇所が印象に残った。第一にリスキーな戦争を起こし易い。サダム・フセインの戦争の例。第二に国内の国家転覆勢力に対する対処に割く余分なエネルギーを使う。所謂、クーデターへの対処で軍隊を分散させざる得ない処置を取る。第三にリーダーの周りにイエスマンを抱えて、戦局の判断を誤る場合が多い。現実にプーチンのキーウイ攻略の失敗がそれを物語っていると言われている。日本の満州国建国の成功体験が日中戦争の泥沼に嵌ったと指摘。2023/01/07
Y田
5
非常に真っ当な内容だったかと思います。細かい事柄は置いといて全体通して思った事を。◆今は帝国主義の時代とは状況がまた違う。例えば日本の感覚で「停戦、反戦」を言っても、「1945年の時期の無条件降伏─平和(?)─ 復興、経済発展」とは状況が異なる。そういった事をふまえ、広い視点、バランスをもった考え方が必要なのかなと思う。左派識者の言論も100%肯定否定ではなくあくまで一つの意見、くらいがいいか。◆それと、やっぱり「経済」の重要性。というか自由主義経済。これも再確認した。2023/04/23
Oki
1
エマニュエル・トッド等の「ロシア侵攻はアメリカの方が悪い」という意見は確かにかなりの違和感。 やくざがどの程度までひどい事をするかを、一般市民が見誤って、殴りかかられたと言って、やくざ側より、一般市民側の方が悪いという事にはならないと思うが,これらの人は、そういう場合もやはり一般市民側が悪いという線引きなのだろうか? という事は、これらの人は「力の強い鬼は何をやったって許されるのよ。」という価値観か? プーチンはまさにそういう価値観だろうが、「プーチンと同じ価値観です。」...と言っているのだろうか?2023/03/04
hoven
0
話が散漫だった。いろんな媒体に書いた記事をまとめたもの。書いてる内容は納得できる。欧米の知識人がなぜかやたらとロシアの肩を持つは本当に解せない。日本が降伏したときは相手と時期が良かったとの話はその通りだと思った。2023/03/14