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内容説明
世界が物価高騰に襲われている。この高騰は、景気の過熱に伴う「デマンドプル・インフレ」ではなく、景気後退・政情不安を招く「コストプッシュ・インフレ」の性格が強い。その背景にあるのは、グローバリズムの終焉という歴史的な大変化だ。このようなときには安全保障の強化や財政支出の拡大が必須だが、それらを怠ってきた日本は今、窮地に陥っている。世界秩序のさらなる危機が予想されるなか、もはや「恒久戦時経済」を構築するしか道はないのか。インフレの歴史と構造を俯瞰し、あるべき経済の姿を示した渾身の論考。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
61
デマンドプルインフレと、コストプッシュインフレは、高校政経でも出て来た。なので、高校生でもそのメカニズムを知りたい場合はおススメできる。難しいかもしれないが、今起きていることの理論的解説がなされているのは、下々としてはうれしいことだ。また、スタグフレーションの言い換えもなされている。興味のある人は、一読をおススメしたい。2023/01/18
読特
49
2種類あるインフレ。「消費意欲が旺盛で生産が追い付かず値段を上げる」「資源など生産のベースとなるものの調達手段が突如失われ、品薄となり物価が上がる」。前者は比較的経済が良好な状態。政府は消費が過熱な時のみ財政と金融を引き締めればよい。後者は危機的な状況。棄損した生産力をカバーすべく積極財政で投資を促す。対策は真逆だ。両者の区別がつかず誤った判断に至ったFRB。その行くつく先は世界の混とん。経済学は未発達な学問。人々を幸せに導けていない。”節約”が常に正しいとは限らない。財政赤字は経済が健全である証拠。2023/03/14
ta_chanko
28
冷戦後、急激に進展したグローバリゼーションは2008年の世界金融危機(リーマンショック)を機に後退し、2020年の新型コロナウイルスによるパンデミックと2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻によって終焉を迎えた。その結果、世界的にインフレが広がっている。供給減少によるコストプッシュがその原因。これに利上げで応じても効果はない。格差の拡大は反乱・革命・戦争などの危険性を高める。パンデミックや気候変動にも見舞われている今、積極財政・産業政策・資本規制・価格統制による恒久戦時経済しか道はない。2023/03/13
belalugosi6997
26
帯に「このインフレ、…」とある、この=コスト・プッシュ型(以下)である。ディマンド型ならば特効薬があるが、CPはそれぞれ個々の対処方法が違うので経済だけでなく、地政学や史学を要するために経済学では対処できないのである。問題は今回のインフレはCPであり、欧米の中央銀行が実施した「利上げ」は失政愚策である。なぜ利上げをしたのか?富裕層や企業にとって利上げによる貨幣価値の下落は大歓迎で、財政出動や減税は嫌悪となる。この著書で「実物資源の供給の制約」「恒久時戦時経済」を理解できなければ読解は厳しい。ベスト著書2023/04/15
楽
22
22年12月。長々と頁を費やしてMMT(現代貨幣理論)の正当性を訴える本。「貨幣循環理論」もMMTも目茶苦茶な理論。といって「ザイム真理教」信者でもないが。物価について知りたいなら渡辺努氏の本を読んだ方がいいだろう。こちらは買うだけお金の無駄だった■自由主義を世界に広めれば平和な世界が築けるということはなかったし、経済的相互依存が戦争を抑止するなどというリベラリズムの考えは誤りだったという指摘はその通り。安倍政権に対しては軍事費抑制、TPP、電力自由化など個々の政策を取り上げて特に厳しく批判(指摘の通り)2024/02/12