内容説明
私たちの周りでは当たり前のように外国人たちが働き,暮らしている.もはや日本は世界的な「移民大国」となっている.しかし,その受け入れは決してフェアなものではなかった.雇用,家族形成,ことば,難民……彼ら彼女らが生きる複雑で多様な現実を描き,移民政策の全体像と日本社会の矛盾を浮き彫りにする.
目次
はじめに
第1章 「移民国家」日本へ なぜ、いかにして、を考える
1 「移民国」へ
2 グローバリゼーションと移民の時代
3 構造的ニーズと人の移動
4 「移民国」日本の前史をふまえる
第2章 外国人労働者の受け入れと日本
1 外国人労働者の受け入れへ
2 外国人労働者の増加の軌跡と背景
3 労働者送り出し国の事情
4 持続可能なイミグレーション政策だったか
第3章 外国人労働者の就労の現在
1 多様な存在
2 周縁の就労外国人
第4章 定住、外国人労働者から移民へ
1 出稼ぎ就労型の終焉
2 日本定住へ
3 家族と共に
4 労働者の人権としての「家族と共にあること」
5 移民化、移民人口を推定する
第5章 差別、反差別、移民支援
1 外国人差別の諸相、諸次元
2 共に生きるべき場と外国人/移民差別
3 差別とたたかう、そして外国人/移民支援へ
4 庇護移民に扉を開く 国際人権と日本
第6章 多文化共生の社会への条件
1 少子高齢化と移民の受け入れ
2 多文化共生の社会をめざす
エピローグ
引用・参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
73
コンパクトな本ながら、現在の日本における外国籍をもったり外国出自の人々が制度的、社会的にどのように扱われているかの見取り図を提供している。少子高齢化の中、労働力、とりわけ現業労働力がひっ迫する日本は、外国出自の人たちの労働力に30年近く依存する傾向を高めてきた。しかしそうした人々は、よく知られる技能研修生や留学生のような「サイドドア」からの受け入れであり、本書ではそれを「フロントドア」から受け入れ、共生できる実質を制度的にも社会的にも作るべきとする。また、日本の難民受け入れについても厳しい指摘をしている。2022/11/29
tamami
49
私が住む田舎のコンビニやスタバにも、外国人と思われるスタッフがいて、懸命に働いている姿が常態化している一方で、一次・二次産業における研修生を中心とした外国人労働者の実態についても広く認知されるようになって久しい。本書では現在300万人を数えるに至った、日本の移民について、歴史や受け入れの実態、とりわけ就労や定住、言葉や家族の問題等、多方面に渡る問題意識のもと、具体例を織り込みながら詳述される。「移民政策」がもたらした現状と課題を知ることで、我々一人一人に「移民問題」に向き合うことの大切さを示唆してくれる。2023/02/02
綾(りょう)
15
著者は国際社会学を専門とする大学教授。最近、フランスで起きた暴動や川口市でのクルド人の問題を見ていると、移民について否定的に感じがちだ。だが、日本での移民に関する法整備が整っていないことも事実。この本では、移民についての基礎的な知識がのっているため、移民について知るきっかけになる本だと思う。2023/09/27
tharaud
9
2022年の刊行。ウクライナ戦争やコロナパンデミックの影響にも言及されている。日本はすでに移民国家といえる状況になってるが、制度も人々の認識も十分ではない。「外国人労働力」云々を論じる前に、人権を保障する法制度の整備が急務であることがわかる。「研修」「留学」を建前とした就労者という「サイドドア」からの受け入れが、結果的に社会保障を受けられず貧困に陥る移民を生み出しており、「フロントドア」からの受け入れを進める必要があるという指摘はもっとも。2025/07/05
モリータ
9
◆2022年11月岩波新書刊。著者は1940年生の社会学者、専門はフランス社会学、日本の移民(労働者)受入れに関する著書も多い。お茶の水女子大名誉教授。◆戦前期も含めた移民受け入れの概史、労働者/定住者/難民/外国人差別をめぐる状況(データ)と問題が簡潔かつ批判的に叙述されている。授業の参考書として使いやすい。◆忙しくなってきたので引用は省略、付箋でチェック。2023/04/13
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