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内容説明
ベストセラー「怖い絵」シリーズ著者最新作!
パンデミック、飢餓、天変地異、戦争……
人類の歴史は災厄との戦いの歴史でもある。
画家たちは、過酷な運命に翻弄され、抗う人々の姿を描き続けてきた。
ムンクは疫病で死にゆく者が生き残る者へ示したあふれる愛を、
ミレイは天災から立ち直ろうとする若者の強靱さを、
ゴヤは怒りでいっぱいになりながら人間の蛮行を、
それぞれキャンバスに塗り込め、叩きつけた。
本書は、そんな様々な災厄の歴史的背景を解説しながら、現在も人々の心をつかむ名画の数々を紹介する。
目次
序章 災厄を呼ぶ神々の騎行
一章 大洪水と方舟(旧約聖書時代)
二章 古代の戦争 絵画に込めた願い
三章 古代の天変地異 神の怒りと跡形もなく消えた街
四章 中世の疫病 パンデミックと「死の舞踏」
五章 三十年戦争 最大最後の宗教戦争
六章 大火と絵画、西洋人が描いた「江戸の華」
七章 ペストの波状攻撃
八章 梅毒の猛威、疫病が照らす社会の暗部
九章 戦争のアレゴリー(寓意画)
十章 天然痘の恐怖とワクチン騒動
十一章 洪水、そして名画の数奇な運命
十二章 ナポレオンという災い
十三章 コレラの惨禍 死をもたらす神の使い
十四章 アイルランドのジャガイモ飢饉
十五章 結核のロマンティシズムと現実
十六章 第一次世界大戦とスペイン風邪
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
166
人類の歴史は災厄の歴史だ。ペストに侵され、食物が枯れ、神の名の下に殺し合うなど夥しい犠牲者を生んだ天災、疫病、飢餓、狂気などをキャンバスに記録しようと、画家たちは筆をとり続けた。そこで描かれるのは人の無力さ愚かさを証明する悲惨な死の数々であり、地球とは死の世界ではないかと思わせる。掲載された絵画の多くを実際に見たが、トレチャコフ美術館では「過去、現在、未来の偉大な征服者に」捧げられた『戦争礼賛』に圧倒された。今こそプーチンはこの絵の前に立ち、ウクライナの野に頭蓋骨が積み上がっているのだと認めねばならない。2023/02/12
みっちゃん
143
天変地異、疫病、そして戦争。古えから人類を危機に陥れてきた災厄。その非情さに泣かされるのはいつも弱い立場の民衆、その怒りや悲しみを画家達は絵画に残してきた。筆者の詳細でわかりやすい解説によって、1枚の絵に込められた画家の真意、歴史的背景も浮かび上がってくる。が、疫病や自然災害は避けられないとしても、戦争はお互いの叡知や歩み寄りで避けられるのではないか。1番恐ろしかったヴェレシチャーギン『戦争礼賛』荒野に山と積まれ、死して尚、悲鳴や呪いの言葉を吐いているようなしゃれこうべを見て思う。2023/03/31
KAZOO
130
この著者は本当に海外の絵画をうまく紹介してくれる本が多いと感じています。この本も最近の世界の状況などから選んだ絵画をわかりやすく説明してくれています。このような絵ばかりをよく集められたとおもいます。惜しむらくは新書という事で迫力が薄まってしまっているのではないかと感じました。最初のフランツ・シュトゥイックの「ワイルドハント」などは現物で見たい気がします。またアルノルド・ベックリンの「ペスト」はバーゼル美術館で見たことがあり再度見てみたい気にさせてくれました。2023/12/21
読特
93
「絵画は見るものではなく読むものだ⁉」と教えてくれた中野先生。災厄は遭うものではなく、鑑賞するものでありたい。自然災害に戦争、そして疫病。ペスト、梅毒、コレラ、結核、天然痘。医療が未発達の時代のパンデミック。未熟な土木での天災。身近に迫る死の恐怖に感情を揺さぶられ筆を執る。出来上がった作品は後世に残る。医学の発展、インフラ整備、平和外交。現代に生まれて一安心?…911と311、新型コロナにウクライナ危機。人類は災いを克服できていない。武器の発達で被害が激化。幸か不幸か、芸術作品はまだまだ生まれるのだろう。2023/02/08
rico
87
災厄は2種類に分かれる。人の力では如何ともし難いものと、人が自ら引き起こすものと。前者、例えば天変地異や疫病は発生を未然に防ぐことは難しいけど、経験や知恵で影響の緩和はできる。一方後者は、災厄への「勝利」への意志ががさらなる災厄を生むという負の連鎖。中野さんの解説楽しいが、正直滅入る。このような作品が描かれ続けてきたということは、災厄がある種の娯楽として扱われてきたということ。画家の純粋な怒りの発露という面もあるにせよ。人の不幸は蜜の味・・・。私も「怖い絵展」嬉々として行ったし、偉そうなことは言えないか。2024/02/16