内容説明
今年3月、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」で本物と鑑定され大反響を呼んだ、井上ひさしの未発表戯曲。没後12年にして最新作!
佐々木喜善が収集した伝承・昔話をまとめた『聴耳草紙』の一編「馬喰八十八」をベースに大胆な創意を盛り込んだ作品だ。舞台は「羽前の国、小松郷」。現在の山形県川西町、井上ひさしの出身地。時は「156…年」。病気の老婆を連れて、馬一頭と村にやってきた太郎。村の有力者・横暴な松左エ門は、この馬が黄金のくそをすると聞き、太郎から無理矢理買い上げる。しかし黄金を出さないため馬は殺されてしまう。その後、太郎は巧みなうそを重ねて、松左エ門をはじめとする村人からまきあげ大金を手にしながら、ついに復讐を果たす。太郎の悪漢ぶりが痛快なピカレスク物語。
第一稿、昭和34年6月21日。没後12年にして、井上戯曲ファン垂涎の最新作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
くれよん
21
テレビ「開運!なんでも鑑定団」を観ていたら、今は亡き井上ひさしさんが若かりし頃に書かれた戯曲の未発表原稿が出品され、後日井上氏の奥さまが買い取られて、この本を刊行されたとの紹介があり、手に取った。人を騙しながら財を得るというピカレスク物語ではあるが、ト書から舞台を想像しながら読むと臨場感があり、主人公、太郎の悪態ぶりや巧妙な口ぶり、騙される村人達との掛け合いや怒りが実に面白かった。2023/04/15
やまねっと
16
井上ひさしがまだ井上ヒサシ(漢字)であった時の未発表戯曲。この戯曲が発見された時のなんでも鑑定団はリアルタイムで見ていたから、本になったら読んでみたいなとは思っていた。図書館にあったので読んでみた。非常に面白かった。これを26歳の若者が書いたとはさすが井上ひさしであると感心した。全ては起こったことしか信じない。宗教も他人も信じないところは自分にも通じるところがあるなと思った。 今、上演されるとどうなるかというのを思うと居ても立っても居られない。こまつ座さん、是非この作品を上演してください。切に願う。2023/10/21
n.k
10
これほどクールな嘘吐きみたことない…巧みな嘘で思いのままに金儲けする様は痛快。モラルはないが、どんなに絶対絶命な状況でも神頼みしないプライドの高さ、カッコいい。「自分の力でやってみますよ。わたしはね、いつも自分の主人でいたいんです」そしてこのワクワクしちゃうタイトル…しっかり回収してて読後感◎◎◎2023/02/05
じょうこ
6
作者24歳の時の未発表戯曲。全5景。表紙絵と、-馬に乗ってこの世の外へ- という、サブタイトルに強く惹かれて。実際に4本足の馬が舞台に出てくることはないのだが、馬という存在を材料に、人間たちの金と欲と情けが、若者太郎を中心に描かれる。芥川賞にしろ、若い世代の小説は数多く、その言葉たちは理解できたりできなかったり、新鮮だったり奇異だったり。井上ひさし24歳の言葉は私には、小気味よく、眼を覚ましてくれた。舞台で演ってほしいな。2025/01/30
ゴロチビ
6
昨年(2022年3月)なんでも鑑定団で発見された原稿(昭和34年執筆)による戯曲、とのことで興味を持つ。帯にもピカレスクとある通り主人公は頭の回る悪い奴で騙し方がえげつない。しかし騙される方の強欲さ愚かさが招いたことでもあるので主人公の悪辣さは薄まって見える。ただ、自分はどうも戯曲の読み方が分からないようで(うかうか三十ちょろちょろ四十も良く分からなかった)、むしろこの作品と元ネタが同じらしい1986年の作品「馬喰八十八伝」の方を読んで、作者の中でテーマがどのように整理されたか確かめてみたいと思った。2023/04/16
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