ちくま文庫<br> 名前も呼べない

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ちくま文庫
名前も呼べない

  • 著者名:伊藤朱里【著者】
  • 価格 ¥715(本体¥650)
  • 筑摩書房(2022/12発売)
  • ポイント 6pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480438416

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内容説明

元職場の女子会で恵那は恋人に娘ができたことを知らされる。かつての父との出来事や、異性装の親友メリッサに救われた大学の飲み会、保育園で誤解を受けた保護者との関係、自身の女性性をもてあまし、生きづらさを抱える恵那の支えとなっていた恋人の裏切りを知り、自暴自棄となった恵那が伸ばす手の先にあるものは―。第31回太宰治賞受賞作がついに文庫化!

目次

名前も呼べない
お気に召すまま
解説──児玉雨子

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

mayu

21
2作収録。表題作は不倫相手に子供が産まれて、絶望して仕事も辞めてひきこもる恵那。自分の想いが伝わらないことへの八つ当たり。どこまでいっても相手の気持ちではなく、自分の気持ちばかり。大切にしてくれる親友さえも傷つけ、幻を映し出して悲劇に浸って自分を追い詰める姿や可笑しくもないのにヘラヘラと笑う姿はどこまでも痛い。もう一作品はベットの下に居場所を求める美波が主人公。両作共に幼い頃の家庭環境がトマラウとなり重くのしかかり人生を狂わせる。なにが起こる訳じゃないのに、いつ終わるだろうとずっと息苦しい読書だった。 2022/10/04

蜜柑

10
他人を勝手な解釈で分かろうとすること、他人の予期せぬ言動に対して理由をつけたがること、今の自分自身にもドキッとさせられるような台詞回しがあってとてもよかった。 文章自体は読みやすくて、今の歳で読めたことも良かったのかもしれない。自分は自分、他人は他人だということは当たり前なことなのについつい忘れる時があると改めて思った。 初読み作家さんだったけどこれから読んでいきたい。2023/12/21

しろまつ

1
弱い人の内面を掘り下げている描写がリアルだった。弱い人と一言で言っても、その内側には様々な要因や感情が複雑に絡み合っていて、その人自身ですらはっきりと弱さの原因が掴めていない。絶対に面倒だと思うはずなのに、そんな自分のために怒ってくれる他人を大切にしなければいけない。そう理屈としては分かるけど、弱っているとその理屈すら上手く受け止めきれず、手を差し伸べてくれる人を突き放してしまうのが、読んでいてしんどかった。誰だって些細なきっかけで、恵那や美波のようになってしまう可能性があるのだと思った。2022/10/10

tycho

0
久々に投稿したなあ。短編が二篇、サクッと読めつつ、心に重石がのしかかりつつ、読了。解説も秀逸。我々が日々抱える罪悪感と、それはエゴではないか、本気で抱える罪悪感に殺される人、その先の救い、こんな感じで私は思考をめぐらせ、苦しみました。面白い。これは面白いです。世の中の無自覚に人を傷つけてのほほんと生きる全ての人間は、ぜひこの小説と共に自らを顧みてほしい。2022/10/09

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