内容説明
大手デベロッパーのIR部で勤務する松永光弘は、自社の高層ビルの建設現場の地下へ調査に向かっていた。目的は、その現場について『火が出た』『いるだけで病気になる』『人骨が出た』というツイートの真偽を確かめること。異常な乾燥と、嫌な臭い――人が骨まで灰になる臭い――を感じながら調査を進めると、図面に記されていない、巨大な穴のある謎の祭祀場にたどり着く。穴の中には男が鎖でつながれていた。数々の異常な現象に見舞われ、パニックに陥りながらも男を解放し、地上に戻った光弘だったが、それは自らと家族を襲う更なる恐怖の入り口に過ぎなかった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
363
今年7月の直木賞候補作、ワクワクしながら読んだ。全編「祟り」「骨が焼けた臭い」「白粉の足跡」がおぞましく迫ってきた。本の装丁のデザインが良くできている。舞台は渋谷駅の再開発巨大ビルの地下深く…。そんなこともありそうなリアルに襲われる。考えてみれば、我々も「死者の上で生活している」ようなものだ。2023/09/26
パトラッシュ
331
戦争や災害で無数の屍を重ね、葬られなかった骨が灰と化した土地が祟りを招くとの言い伝えは東京では珍しくない。これまで裏の地鎮を司る企業により何とか抑えられてきた祟りが、渋谷の高層ビル建設現場で起こってしまったら。経済合理性が最優先される今、現在進行中の巨大再開発プロジェクトで怪奇現象が続発して人が取り込まれていく有様は、あり得るかもしれないとの恐怖で背筋を冷たくさせる。政治軍事上のリアル描写に弱い部分のあった著者は、むしろ空想やファンタジー要素と融合させた作品こそ本領ではと思わせるホラー小説の成功作だろう。2023/06/01
青乃108号
319
これは恐ろしい。描写されるイメージがいちいち強烈過ぎて、夢に見そうで恐ろしい。匂い、渇き、熱さ、そして骨灰。読み手の五感を直に攻撃してくるようなイメージの連続に魅入られ、本を閉じる事が出来ない。家族を守る為、満身創痍になっても闘う父親の姿に胸熱で、なおさら本を閉じる事が出来ない。読んでる間、俺の顔に浮かんでいたのは、おそらく凶相。息もつかせずようやく読み終えて、解き放たれて、隣に嫁が寝てくれてるのが何とも言えず嬉しかった。2023/08/07
bunmei
279
直木賞候補として珍しいホラーミステリー。最初からゾワゾワ、ゾクゾクさせるシーンの連続。読書中に背後に何か居ないかを確かめたくなる気配を感じながらも、次の展開が気になる筆致に呑み込まれていった。地中奥深くに降りていく真っ暗階段から、地図にもない此の世とあの世の境界を彷徨う様な祭祀場の深い穴が舞台。そこに結界、人柱、祟り、骨灰といったジャパニーズ・ホラーらしいおどろおどろしい言葉を散りばめ、迫り来る見えない恐怖を感じさせる作品。弱き立場の妊婦や子供が巻き込まれ、取り憑かれた男が壊れていく様が、恐怖を煽る。 2023/07/07
うっちー
250
何かわからない世界でした2022/12/31